玉田吉行の「アフリカとその末裔たち(続編)」

 小島けいのブログを更新している玉田吉行の→「ノアと三太」に「アフリカとその末裔たち(続編)」を紹介したいと思いますので、この画面をお借りします。門土社(横浜)のメールマガジン「モンド通信(MonMonde)」に2014年11月から連載中です。一覧のあとに<最新号>を載せています。

 一覧です。

<1>「アフリカとその末裔たち(続編):(1)戦後再構築された制度①」(No.75  2014年11月10日)

最新号です。

「アフリカとその末裔たち②:(1)戦後再構築された制度①」

                                   玉田吉行 

 前回は「アフリカとその末裔たち」(Africa and its Descendants 1)の3章「アメリカ黒人小史」(A Short History of Black Americans)の「公民権運動、その後」について書ました。前回までジンバブエに行ったあとに書いた英文書「アフリカとその末裔たち」(Africa and its Descendants 1)に沿って、アフリカ史、南アフリカ史、アフリカ系アメリカ史を12回に渡って紹介してきましたが、今回からは、2冊目の英文書「アフリカとその末裔たち―新植民地時代」(Africa and its Descendants 2―Neo-colonial Stage―)の紹介をしようと思います。

 1冊目は簡単なアフリカとアフロアメリカの歴史の紹介でしたので、2冊目は、アフリカについては①第二次世界大戦後に先進国が再構築した搾取制度、開発や援助の名目で繰り広げられている多国籍企業による経済支配とその基本構造、②アフリカの作家が書き残した書いた物語や小説、③今日的な問題に絞り、④アフロアメリカについてはゴスペルからラップにいたるアフリカ系アメリカ人の音楽に絞って、内容を深めました。①が半分ほどを占め、引用なども含めて少し英文が難しくなっています。医学科の英語の授業で使うために書きました。
 書くための時間がほしくて30を過ぎてから大学を探し始め、38の時に教養の英語担当の講師として旧宮崎医科大学に辛うじて辿り着いたのですが、大学は学生のためにありますから、当然、教育と研究も求められます。元々人間も授業も嫌いではないようで、研究室にもよく学生が来てくれますし、授業も「仕事」だと思わないでやれるのは幸いだったように思います。
戦後アメリカに無条件降伏を強いられて日常がアメリカ化される生活を目の当たりにして来た世代でもありますので、元々アメリカも英語も「苦手」です。学校でやらされる英語には全く馴染めませんでした。中学や高校でやらされる「英語」は大学入試のためだけのもので、よけいに馴染めなかったようです。高校で英語をやらないということは、今の制度では「いい大学」には行けないということですので、今から思えば、嫌でも英語をやった方が楽だったのかも知れません。
 したがって、大学で医学科の学生に英語の授業をするようになっても、最初から「英語をする」という発想はありませんでした。するなら、英語で何かをする、でした。
 何をするか。
最初は一年生の担当で、100分を30回の授業でした。一回きりならともかく、30回ともなると、相当な内容が必要です。学生とは多くの時間をともにしますし、一番身近な存在の一つでもあります。学生の一人一人と向き合ってきちんと授業をやることは、自分にとっても大きなことでした。
 おのずと答えは出てきました。自分がきちんと向き合って考えてきたことを題材にする、でした。それは、リチャード・ライトでアフロアメリカの歴史を、ラ・グーマでアフリカの歴史をみてゆくなかで辿り着いた結論でもあります。過去500年あまりの西洋諸国による奴隷貿易や植民地支配によって、現在の先進国と発展途上国の格差が出来、今も形を変えてその搾取構造が温存されている、しかも先進国に住む日本人は、発展途上国から搾り取ることで繁栄を続けていい思いをしているのに、加害者意識のかけらも持ち合わせていない、ということです。
 将来社会的にも影響力のある立場になる医者の卵が、その意識のままで医者になってはいけない、という思いも少しありました。
それと英語も言葉の一つですから、実際に使えないと意味がありません。そこで、できるだけ英語を使い、実際の英語を記録した雑誌や新聞、ドキュメンタリーや映画など、いろんなものを題材にして、学生の意識下に働きかける、そんな方向で進んできたように思えます。
二冊の英文書も、その延長上で書きました。実際には、アメリカに反発して英語をしてこなかった僕が、授業で英語を使えるようになるのも、英文で本を書くのも、授業で使ういろんな材料を集めるのも、作ったりするのも、なかなか大変でした。ま、今も大変ですが。
今の大学に来て27年目で、今年度末の3月で定年退職です。まもなく最後の半期が始まります。

(写真:「アフリカとその末裔たち1」)

次回は「アフリカとその末裔たち②:(2)戦後再構築された制度②」です。(宮崎大学医学部教員)

最終更新日: 2014年 11月 6日 10:04 AM   カテゴリー: 本(装画・挿画)
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