私の絵画館22:ハーシュくんとコスモス

 

私の絵画館22:ハーシュくんとコスモス

 

 
モデルは宮崎県在住だったハーシュくんです。

この絵を見ると、昨年の大分県飯田高原の個展を思い出します。
宮崎県から見に来て下さった飼い主さんからご依頼を受けた絵だからです。

今、ちょうど一年がすぎ、その高原の美術館に滞在してこの原稿を書いています。★ 続きは題をクリック ↑

今年は初めて、雨ばかりの連休です。晴れた気持ちのよい日にくらべれば、お客様はずいぶん少なめですが、少ない時にはゆっくりお話しできるというよい点もあります。

17日の土曜日の夕方ここに到着しましたが“館内に入っていたお客様が今出られました”とのこと。そのまま誰も入らないで終わるのだろう、と思っていたら、ふらりと女の方がこられました。

お写真をお預かりして犬(わん)ちゃん猫ちゃんたちを描いています、とご説明すると、“人間は描かないんですか?”と聞かれましたので、“描きますよ。前にもこの美術館の館長さんのお母様を描きましたよ”とお話しました。

絵を見ていると、どの子もそれぞれに特徴が出ているので、
自分の母親も描いてもらいたいなあ、と思ったのだけど、と言われました。

74歳のお母様はしばらく前に脳梗塞で倒れて、今はリハビリの最中で、すぐつれてくるのは無理なので、来年本人をつれてきて、それで絵を頼みます、と言って帰られました。

ところが、翌日の18日、その方がお母様といっしょに再び訪ねて来られました。プロフィールの葉書きにのっていた絵を見て、
この人に絵を描いてもらいたいから、会いに行く、とお母様が言われたそうです。

確かに杖をついて歩きにくそうでしたのに、来ていただけたこと、それだけでも、ほんとうに嬉しいことでした。

結局、娘さんと二人の絵を描くことに決め、ギャラリーの前で、迷カメラマンの相方が何百枚もの写真を撮りました。

お好きな写真を選んでいただき、それをもとに絵を描いて、10月から施設に入られるお母様に、クリスマスプレゼントをすることになりました。

思うように身体が動かなくなって、少し自嘲気味のところもあったお母様が、髪を整えようかな、口紅もぬった方がいいかな、と言い出し、少しずつおだやかな笑顔になって下さったことが、何よりだったと思います。

冷たい雨は降り続いていましたが、心がほっと温かくなったひと時でした。

小島けいのカレンダー『私の私の散歩道2012~犬・猫・ときどき馬~』の10月に収載しています。→「ハーシュくん」でもどうぞ。

執筆年

2011年

収録・公開

「ハーシュくんとコスモス」(No. 38:2011年9月21日)

最終更新日: 2018年 12月 31日 6:50 PM   カテゴリー: , 私の絵画館, 絵画,
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