私の絵画館73:ルーマーちゃん
桜の季節に入りましたが、しばらく前は白木蓮がたおやかに咲いていました。そしてほぼ同じ頃、もう少し小ぶりな白い花も咲きます。<こぶし>です。
ずっと昔、鶴林寺というお寺に一本だけあるその花を見に行きました。案内してくれた友人が“花びらがお日様色なのよ”と教えてくれました。見あげると薄い花びらのむこうに陽の光が透けてみえ、それはまさしく<お日様色>でした。★ 続きは題をクリック ↑
それ以来、大ぶりで豪華な白木蓮を見るとその美しさに圧倒されながらも、同時に華奢でひかえめなこぶしの花を思うようになりました。
3年前から個展の場所を、大分県の高原から東京世田谷にあるドッグカフェ「ルーマー」に移しました。そのお店の名前のもとになったのが、ダルメシアンのルーマーちゃんです。
大切に可愛がっておられたオーナーさんはもちろんたくさんの写真を撮っていたのですが。何年か前絵を描いてあげようという人が現われ、たった一枚を残しすべてをその人に預けたそうです。
ところがしばらくして連絡がつかなくなり、結果写真もかえらず、一枚の写真だけが残されました。
飼い主さんから写真をお預りするとどれも大切にと気を遣いますが、すでに何年も前に亡くなっている子の場合はなおさらです。
しかも今回はそれが残っているただ一枚の写真なのですから、これまでで一番気を遣いました。それはお座わりをしてカメラをつぶらな瞳で見上げている愛くるしい写真でした。
ただ動物を上から目線で撮ると必ずそうなるように、ルーマーちゃんの鼻は実物より丸く大きく映っていました。
オーナーさんのご希望は、背景はなしで、うす紫のパステル紙で。顔だけをアップで、目はウルウルとつぶらで愛らしく、鼻はもっとスマートで鼻すじが通っているように。耳は片方しか見えていないけれど両耳をちゃんと描いて。ざっとこういうことでした。
悪戦苦闘すること1ヶ月。ようやく出来上がったのがこの絵です。
オーナーさんは
“まるで生きているよう!!”
と喜んで下さり、貴重な一枚のお写真も無事お届けすることができ、ホッと致しました。
執筆年
2016年
収録・公開
→「ルーマーちゃん」(No. 90:2016年4月3日)