小島けいのエセイ~犬・猫・ときどき馬~⑯:「アリスの小さな“きせき”」Cat(2021年12月20日)

続モンド通信37(2021年12月20日)

小島けいのエセイ~犬・猫・ときどき馬~⑯:「(猫の)アリスの小さな“きせき”」Alice

 アリスは、5匹の子猫のお母さんです。Alice is the mother of five kitten.

(水彩 Water Painting)

(パステル Pastel)

 キャンパスのグランドでの最初の出会いから、一大決心をして家につれてくるまで、何ヶ月もかかりました。

It took several months since we happened to meet her at the University campus and made up our mind to take her to our home.

そうして、ようやく家に来た時には、すでにお腹に赤ちゃんがおり、24日後に5匹を出産しました。→「アリス Alice」、→「母親になった猫 The Ca t who became the mother」(2009年11月29日)

Finally she came to home, already pregnant, and gave birth to five kitten twenty four days after.

5匹のうち3匹(きいちゃん、さやちゃん、Mちゃん)は、優しいご家族と出逢うことができました。Three (Kii-chan, Saya-chan, M-chan) of the five kitten were welcomed to their foster parents.

合歓ときいちゃん Silk tree & Kii-chan

「私の散歩道2010~犬・猫ときどき馬~」7月

July, 2010 Calendar ~My promenade~Dogs, Cats, Sometimes Horses

きいちゃんとクリスマスローズ Christmas rose & Kii-chan

秋桜(こすもす)とさやちゃん Cosmos & Saya-chan

「私の散歩道2010~犬・猫ときどき馬~」10月

October, 2010 Calendar ~My promenade~Dogs, Cats, Sometimes Horses

蔦(つた)とさやちゃん Ivy & Saya-chan

「私の散歩道2010~犬・猫ときどき馬~」11月

November, 2010 Calendar ~My promenade~Dogs, Cats, Sometimes Horses

アネモネとさやちゃん Anemone & Saya-chan

むべとMちゃん Japanese staunton-vine & M-chan

デルフィニウムとMちゃん Delphinium & M-chan

「私の散歩道2018~犬・猫ときどき馬~」6月

June, 2018 Calendar ~My promenade~Dogs, Cats, Sometimes Horses

 →「合歓ときいちゃん Silk tree & Kii-chan」、→「クリスマスローズときいちゃん Christmas rose & Kii-chan」、→「さやと蔦 Ivy & Saya-chan」(No. 86:2015年11月28日)、→「秋桜(こすもす)とさやちゃん Cosmos & Saya-chan」、→「デルフィニュムとMちゃん Delphinium & M-chan」(2010年6月)、→「郁子(むべ)とMちゃん」、→

結局、生まれつき体が弱い三毛の女の子<ぴのこ>と、<Pinoko>,  female, calico, weak by nature, and

梅とぴのこ(No. 1)Japanese apricot & Pinoko No. 1

梅とぴのこ(No. 1):「私の散歩道2010~犬・猫ときどき馬~」表紙

Cover, 2010 Calendar ~My promenade~Dogs, Cats, Sometimes Horses

梅とぴのこ(No. 3)Japanese apricot & Pinoko No. 3

梅とぴのこ(No. 3):「私の散歩道2020~犬・猫ときどき馬~」2月

February, 2020 Calendar ~My promenade~Dogs, Cats, Sometimes Horses

水仙とぴのこ Narcissus & Pinoko

水仙とぴのこ:「私の散歩道2011~犬・猫ときどき馬~」2月

February, 2011 Calendar ~My promenade~Dogs, Cats, Sometimes Horses

梅とぴのこ(眠っているぴのこ) Sleeping Pinoko

 →「水仙とぴのこ」、→「梅とぴのこ」(No. 19:2010年2月21日)、

気が弱くてお乳があたらず、発育が遅れていた黒猫の男の子<ジョバンニ>を、お母さんの元に残しました。

<Giovanni>, male, black, later developed because he can’t get enough milk, stayed at our home with Mother.

向日葵とジョバンニ(No. 1) Sunflower & Giovanni No. 1

向日葵とジョバンニ(No. 2)Sunflower & Giovanni No. 2

向日葵とジョバンニ(No. 2):「私の散歩道2011~犬・猫ときどき馬~」8月

August, 2011 Calendar ~My promenade~Dogs, Cats, Sometimes Horses

向日葵とジョバンニ(No. 3)

 →「向日葵とジョバンニ2 Sunflower & Giovanni No. 2」

(Continued) 極端に神経質な性格であるうえに、過酷なのら猫生活が長かったアリスは、家に来て14年になりますが、今も触れることができるのは、私だけです。それも、朝大きなケージから出てくる時、扉を開けて待っていて、ようやくその時だけ(少し無理やりに)抱くことができます。

人との関わりは好みませんが、アリスは子供たちと気ままに平穏にすごしていました。

ところが、今年の1月、三匹がほぼ同時に、ごはんを全く食べなくなりました。子供二匹は獣医さんのおかげで危機を脱しましたが、アリスだけは、そうはいきません。なにしろ、出産後手術をして下さった先生が、迎えに行くと“この子だけはさわれないから、ケージのまま家につれて帰って。後でケージだけ返して。”と言われ、病院の大きなケージに入れたままタクシーで運んだ子です。

おいそれと病院につれて行くことは、とてもできません。

アリスは何も食べられないまま、3日目の朝には、飲んだ水と一緒に血まで吐きました。

その日は木曜日で休診のため、明日には本人が怖がっても、嫌がっても、また先生にご迷惑をかけるとしても、必ず病院につれていく!と、決めました。

ただ丸3日何も体に入っていないので、夜少しだけでも水分をと思い、相方が毎日作ってくれる甘酒を、ぐったりしているアリスを抱きかかえ(もはや、逃げる元気もありません)スポイトで少し口に含ませました。

が、それもすぐに吐き出しました。

どうしたらいいのだろう…と途方にくれている時。娘が電話で“(犬の)三太の時に葛を使ったから、アリスにもあげてみては?”と言ってくれました。

14年も前のことで、すっかり忘れていましたが。三太も葛のおかげでずいぶん助かったことを思い出しました。さっそくアリスにスポイトで、葛湯を少し飲ませました。

今度は、もどしませんでした。

 

翌朝。アリスを病院に連れていく前に、他の二匹にご飯をあげようと、準備をしていると、昨日まで食物を近付けるたび逃げ回っていたアリスが、いつもごはんを食べる場所で待っています。

“えっ?食べれるの?”と半信半疑で少なめにご飯を置くと、自分から食べ始めました。量は多くありませんが、少しずつ何回も食べるようになり、気が付けば2~3日後には、すっかり元のようになっていました。

アリスのなかでいったい何がおきたのか。どう考えても、小さなスポイトで1~2杯のくず湯が、血まで吐く状態だったアリスの胃を回復させ食欲をもどしてくれた、としか思えませんでした。

 

14年前の犬の三太のこと。ちょうどアリスとキャンパスで2回目に出会った頃、三太の胃ガンがわかりました。その時、先生には“手術も治療もしません”とおことわりをしました。残りの時間を片時も離れないで一緒にいよう、と思ったからです。

そのかわり、翌日からごはんをすべて手作りに変えました。そうして、それに鍋一杯のたっぷりの葛湯をかけました。食べるのが大好きだった三太は、毎回喜んで食べてくれました。くず湯で、胃を通過しやすくできれば、腸に届いて栄養になってくれる。そんな単純な考え、願いからでしたが、ほんとうに何も食べられなくなるまでの約2ヶ月間、三太はそれまでと全くかわらない食欲で食べて、散歩もしました。

 全く食べられなくなった時、東京から子供たちを呼び戻しました。

先に娘が帰ると、三太の表情が一瞬にして、<ふわあー>と和らぎました。そして、すっかり安心した明るい顔になりました。

2日後息子が帰った時には、嬉しさで、残りの力をふりしぼり立ちあがりかけました。娘が慌てて抱いて止めました。

立つのはあきらめた三太でしたが。横たわったままの姿勢で、顔はしっかり笑っていました。

“三太が笑ってる!”と娘が驚き、何枚も写真をとりました。

2~3日後、家族に囲まれて、みんなの呼ぶ声をききながら、三太は私の腕のなかで逝きました。とてもやすらかな顔でした。

 葬儀場に行ってくれた子供たちから、骨の大部分が青くキラキラ光っていた、と後で聞きました。娘は、それは薬のせいだと思ったようですが。治療はいっさいしていない、薬も飲んでいないと知り。あれがガン細胞だったんだ‥‥と絶句しました。

それほど病気が広がっていたにもかかわらず、“苦しい”と一声もあげず、最後まで穏やかにいてくれたことは、三太の私たちへの優しい心配りと葛のおかげだった、と今も思います。

 

そして、今回のアリスの<小さなきせき>も、葛のおかげだと思うのです。

最終更新日: 2022年 3月 1日 3:31 PM   カテゴリー: エセイ
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