課題図書一覧_1

まして束ねし縄なれば

概要

アレックス・ラ・グーマ著、玉田吉行日本語訳 『まして束ねし縄なれば』(横浜:門土社、 1992年)

 舞台は南アフリカケープタウン郊外のカラード居住区のスラム。そこで生活する人々は風雨に苦しんでいる。ポールズ家には病気で床に就く父親、母親そして4人の子供がいる。長男チャーリーは降り続く雨でもろくなった家を修理しようと材料をもらいに白人のモスタートの元に向かう。その途中で弟の事でロマンと喧嘩したり、深い仲にあるフリーダの家で過ごしたりした。ある日、病に苦しんでいた父がついに亡くなってしまう。ポールズ家は悲しみに暮れるが、母は涙を見せず安らかな眠りを祈った。それから数日後、スージーに想いを寄せる次男ロナルドは、思い通りにならない怒りから彼女をナイフで刺し殺してしまう。その後も悲劇は続いた。フリーダの留守中、ストーブが原因で火事が起こり、2人の子供が死んでしまったのだ。フリーダは自分を責め、それをチャーリーは慰めた。そんな時も、スラムに住む人々にとって悩みの種でもあり、貴重な存在でもある水を降らせる雨は、降り続いているのであった。
 (2004年度アフリカ文化論、教育文化学部社会システム課程 迫上明代)

参考

 作品論にについては
「アレックス・ラ・グーマ  人と作品6 『三根の縄』 南アフリカの人々 1」
「アレックス・ラ・グーマ  人と作品6 『三根の縄』 南アフリカの人々 2」
の二作(二編? 二本?)にまとめています。読んだあとに、目を通してもらえればうれしいです。

南アフリカ「虹の国」への歩み

概要

峯陽一著『南アフリカ「虹の国」への歩み』(岩波書店)

 「虹の国」とは雨上がりの青空にかかる七色の虹のように、黒人も白人も、すべての人種やエスニック集団が互いの違いを認め合いながら、対等に力を合わせ、開かれた国家を建設していこうとする決意を込め、ネルソン・マンデラが生まれ変わった南アフリカをたとえたことばである。植民地時代に受けた数々のアフリカの人達の苦労とその時代の人々の生活、植民地支配を免れるための争い、植民地時代を経てたどり着いたアフリカの人達の思想など私たちが知らなかったアフリカという国が経験した苦労、それを経て立ち上がろうとするアフリカの努力、そのための政策、組織などを、アパルトヘイトの崩壊、植民地支配と人種主義の起源、都市化の百年、同時代の南アフリカ会社、新生南アフリカの挑戦などの区別に分け、南アフリカの過去を振り返り、現在の姿が書かれ、未来への可能性が写真や図なども用いて分かりやすく描かれている本である。
 (2005年度アフリカ文化論、教育文化学部学校教育課程初等教育コース 上冨秀一)

世界で一番いのちの短い国 〜シエラレオネの国境なき医師団〜

概要

山本敏晴著『世界で一番いのちの短い国 〜シエラレオネの国境なき医師団〜』(白水社)

 この本は、アフリカ大陸の西端でギニアの隣に位置する、面積は北海道ほどで、人口は約450万人のシエラレオネ共和国という小国を舞台とする話である。この国の平均寿命は(執筆当時)25〜35歳と世界最短で、国連やWHO(世界保健機構)から常に注目される、世界最悪の医療事情の国である。この本では、戦争で崩壊した病院を再建し、井戸を掘り、トイレを作り、医療物資を輸送し、外来を作り、入院病棟を作り、全力で医療活動していくその過程を、現地で医師団の一員として働いていた著者が、詳細に記述している。一方で、著者が理想としている、「半年して自分が帰った後もその活動が無駄にならないように未来に残るシステムを造る」ことや「現地文化を尊重し理解しながらも、理論的・科学的な国際協力をする」という、非常に高い目標に向かって挑戦していく姿勢、国際貢献を志す人に対する、勇気と実践的な知識などについても書かれており、シエラレオネの現状や基礎事項、今後の課題など、国際協力に少しでも関わろうとする人々の参考となる一冊である。
 (2005年度アフリカ文化論、教育文化学部生活文化課程生活環境コース 中村美樹)

心にしみるケニア

概要

大賀敏子著『心にしみるケニア』(岩波新書)

 ケニアに行きたいと幼いころから想い続けてきた著者は国連環境計画ナイロビ本部で働くことになり単身ケニアに赴く。幼いころからの憧れの地・ケニアにすむことになった著者は胸を膨らませていた。しかし欧米人の住む高級住宅街での暮らしをするうちに出てくる「本当のケニア」に対する疑問を紐解くため一般市民が住むナイロビの街へと居を構える。高級住宅街にいては触れ合うことにできない「ケニアの一般大衆」と触れ合い、辺境の農村へと赴き、本当のケニアを体感する著者。時にはその貧富の差に同情しかけ、時にはそのライフスタイルに驚愕の念を覚え、価値観の差に憤慨しながらも人々の暖かさに感動し、また自分の価値観が如何に狭い世界で形作られたのかを実感させられる。そんな著者の異文化に対する葛藤とケニアの人々の人間模様を描いた作品である。
 (2005年度アフリカ文化論、農学部獣医学科 牟田佳那子)

川をはさみて

概要

グリ・ワ・ジオンゴ著、北島義信日本語訳『川をはさみて』(門土社、2002年)

 優雅で生命力溢れるホニア川はカメノ村とマクユ村を隔てつつも、二つの村を結びつける唯一のものだった。双方伝統、文化を重んじてきたが、キリスト教の浸透により対立が生まれる。カメノにうまれた高潔な青年ワイヤキは、キリスト教徒でありギクユ人としての生活文化を望むムゾニがギクユの伝統的儀式である割礼により命を落とすが、彼女の死により、二つの文化の融合・統一の課題を思索し始める。ワイヤキは何よりも教育の重要性を説き独立学校建設を通して、その具体化に邁進する。その途中で伝統・慣習を守るためには白人を追い出すべきという考えに至るも改宗者との対立や、その娘との恋、味方のワイヤキの才能への恐れや嫉妬などの苦難により具体的政治闘争に発展させることはできずに終わる。
 (2005年度アフリカ文化論、農学部獣医学科 中間由規)

The Colonization of Africa

概要

"The Colonization of Africa," Tamada Yoshiyuki, Africa and its Descendants (Mondo Books, 1995), pp. 6-27.

 アフリカは人類の発展のためにたいへん重要な地域であった。人々が鉄を精錬するようになって、大きな文明の飛躍があった。そして大規模な耕作が始まり、更なる飛躍があった。アフリカは様々な面でヨーロッパよりも優れていた。アフリカからもたらされる金は世界貿易の支払い手段として使われていた。しかし、中世以降ヨーロッパ人によってアフリカの優れた文明は破壊された。当初ヨーロッパの国々はアフリカと貿易を望んでいたがうまくいかなかったので武力でもってアフリカの富を略奪した。やがて奴隷貿易が始まりヨーロッパは富を蓄積し、産業革命の基盤となった。そしてアフリカの多くの国々が植民地となり住民は苦しい生活を送った。第二次大戦後アフリカの多くの国々は独立を果たした。しかし、多くの場合で新しい独立政府は旧来の経済体制を引きずっている。そして現在のアフリカは貧困、紛争など数多くの問題を抱えており植民地時代の負の遺産といえる。
 (2005年度アフリカ文化論、農学部獣医学科 工藤敬幸)

夜が明けるまで

概要

グギ・ワ・ジオンゴ著、松田忠徳日本語訳『夜が明けるまで』(門土社)

 舞台は独立直前のケニア、1950年代に起こったマウマウ闘争(反英独立闘争)の時代。ケニアの人々の圧政への抵抗を背景に、そこに生きる一人の少年の精神的成長が描かれている。
その少年ジョロゲは学問に憧れを抱き、教育を身につければ貧しい生活から家族を救うことも、白人の植民地と化した自分の国を変えることもできると信じている。彼の父ゴゾは入植者のもとで働きながら、奪われた祖先伝来のその土地が、再び自分に帰ってくる日のことのみを生きる糧として待ちつづけている。
情勢は日増しに悪くなり、破壊と暴力の日々が続く。ジョロゲの家庭にも暗雲が漂い、家族はバラバラになっていく。そんな中でもジョロゲは希望を捨てず、神を信じ、学問に明日の光を見出そうとする。しかしある事件によりジョロゲは学問を奪われ、父の死を目の当たりにすることになる。「あしたこそ」では答えにならない難問に初めて直面し、自分の無力さを痛感する。すべてを失い、死を望む心の声に惹かれながら、それでもジョロゲは残された家族や恋人のためにまた歩み始める。
 (2005年度アフリカ文化論、農学部獣医学科 泉瑛子)

アフリカの蹄

概要

著『アフリカの蹄』(講談社、2000年)

 日本人外科医作田信は、心臓移植技術を学ぶために、南アフリカ共和国のヨハネスブルグの大学病院に派遣された。しかし、そこはアパルトヘイトが行われている国で、一方では白人の優雅で贅沢な生活があり、他方では黒人の貧しく、物同等の扱いを受けて人間として認識されない生活があった。そのような南アフリカの現状に作田は激しい怒りを覚える。
 作田は、ブラック・スポットと呼ばれる黒人貧民街にある診療所に時々赴き、黒人医師サミュエルを手伝い治療に当たっていた。そんな中、子どもたちに発疹のある子が出始めた。発疹を作田の知人である白人医師レフ助教授の元で調べてもらうと、なんと絶滅したはずの天然痘のウイルスが発見された。ブラック・スポットの発病者と死者は黒人の子どもを中心に増加した。しかし白人の子どもには発病しない。これは、天然痘ウイルスを使用した黒人一掃計画の始まりだった。レフ助教授の父が白人用に貯えられていた天然痘ワクチンを密かに流してくれたが発覚し、作田の身にも危険が迫った。発疹から取り出し培養したウイルスと共に、黒人組織の手を借りて国外に脱出、国際社会に訴える機会を得た。しかし、共に戦ってきた黒人解放運動リーダーで、作田の恋人パラメの兄ニールは殺されてしまう。一方で黒人たちはワクチン要求などを掲げてゼネストを計画した。そのような流れで
衛生局長で黒人有害論を唱えるノーマン・フォックスらによる記者会見が開かれ、最初はノーマンのペースで進んだが、目覚めたレフ助教授の糾弾によって逆転した。そして、ついにWHOに天然痘ワクチンの製造が依頼された。ようやく戦いに終止符が打たれたのである。パメラや作田、多くの黒人や良識ある白人たちの無数の無抵抗デモ隊の歌声がヨハネスブルグに響き渡っていった。
                                                                 (2005年度英語、医学部医学科一年 竹原彩美)

Africa and its Descendants 2 Neo-colonail Stage

概要

TAMADA Yoshiyuki, Africa and its Descendants 2 Neo-colonail Stage (Yokohama: Mondo Bokks, 1998)

 Since the equal relationship between Africans and Europeans was broken down by the slave trade and colonization process, the exploitation has continued even to this day by changing its forms. Now we are in the last stage:the neo-colonial phase. What we should remember here is that we are on theside of the robber and that some 'chosen' Africans are in the similar position.
 Many Japanese say how lucky we are to be living in such a rich and safe country. They seem satisfied with their 'peaceful' situation with material abundance and convenience. However, we have to reevaluate our way of life and thinking, for our vanity is based partly on the sacrifice of the robbed, who are still suffering from poverty and racial conflicts. It's time to reconsider our salf-image as reflected by Africa and world problems.
 This is the second volume of the AFRICA TODAY series. This book depicts the neo-colonial phase in African history, as well as the music of African descendants. In the first chapter, the focus is on the mechanism and realities of neo-colonialism. In the second chapter, it deals with the neo-colonial  scenes in two literary works by African writers : Alex La Guma's Anda Threefold Cord and Gonzo H. Musengezi 's The Honourable MP. In the third Chapter, after discussions of the AIDS epidemic and Zaire's turmoil , author add a brief account of his family's short stay in Harare, Zimbabwe in 1992. In the final chapter,sprituals and gospel music by African Americans are examined ; some messages of their forefathers have been passed on to later generations in the form of music. African descendants are still singing their songs in their own styles.
                                                                  (2005年度英語、医学部医学科一年 竹原彩美)