さざんか

 母は私が二十七歳の時に亡くなりました。十一月でした。
忌引きは一週間程ありましたが、母のいなくなった家に居ることがつらく、確か五日目くらいに出勤しました。

 通勤の電車が特急待ちで止まるホームに、大きな山茶花の木が一本ありました。
その朝、ドアが開いたちょうどその前に、白い山茶花は、こぼれんばかりに咲いていました。

 数日前から思考も何もかも止まったまま、ぼんやりドアの横に立っていた私に、その白さが飛びこんできました。
そして、心にしみ入りました。
何のつながりもありませんが、私はその時、「ああ、母の花だ。」と思いました。

 その思いは、何十年たっても変わりません。
ですから、一番最初に描いた山茶花は、もちろん白い花でした。


新作(2011/1/21)です:「山茶花」でもどうぞ。

 出版社門土社(横浜)のメールマガジン「モンド通信」(MonMonde)の「私の絵画館」に連載中の→『山茶花』(No. 28:2010年12月10日)でもどうぞ。一重の白い山茶花です。


最終更新日: 2010年 10月 25日 7:57 PM   カテゴリー: 絵画,
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