本紹介36『神のいない三つの部屋』
本紹介36正木邦彦著『神のいない三つの部屋 田上二郎戯曲集』(1997/4/5)の表紙絵で、ポピーを描いています。
→「ポピー」もどうぞ。
「紙一重」の現実
絶望を叫ぶには、人生は長すぎる。捨て去るには荷物が多すぎる。狂気と正気、現実と幻、いずれともつかぬ泡沫の夢、それが人生。だから悲しく、そしていとおしい。
(帯より)
「宗教なんてしょせんはおんなじさ。歴史が始まってから今までに、神が人間を一度でも救ったことがあったかえ」「ある」「救われたような気になっただけさ。神はいつでも人間を破滅させるんだよ。人間はいつでも神にだまされて不幸になるんだよ」「嘘だ」「戦争を起こすのも神だ」「嘘だ」「人を殺すのも神だ」「嘘だ!それはみんな邪悪な人間たちが神の名を騙っているだけだ」(「神のいない三つの部屋」より)
(帯より)
花に対するイメージが、宮崎に移り住んでから全く変ったのは、コスモスだけではありません。
ポピーも、大きくかわった花の一つです。
これまで春先の花屋さんに出まわるポピーは、細い茎でほんとうにひ弱そうな可憐な花でした。
ところが、強すぎる日射しのせいか、よく肥えた土のせいか、宮崎で咲くポピーはとても元気がよいのです。大きめの葉から出た茎はけっこう太く、花びらもとてもしっかりしています。いつのまにかポピーは、たくましい花として私のなかで定着してしまいました。
今ならポピーが街のあちこちで咲きはじめていますよ。こんな私の一言で、では今度の表紙はポピーで、ということになりました。そして、私は宮崎のポピーを描きました。
ところが、都会派の編集者の方たちのイメージは、私が以前抱いていたポピーのそれです。もっとか細く、もっと弱々しく。でも本当はひどくイセイがよいのですが……。
こんな両者のせめぎあいの結果が、その装画になりました。
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