サンダンス
サンダンス
その朝、10月の軽井沢に人影はなく、別荘の点在するあたりは、静まりかえっていました。
一面の霧のなか、小径を散策していた私たちに、遠く馬の蹄の音が聞こえてきました。
足音は確実に近付いてきており、霧のむこうにその距離を測ろうとした瞬間、5.6m先に突如として白馬があらわれました。馬には、まっ赤な乗馬服を着た若い女性が乗っていました。
深い霧のなかから出現した馬と女性のあまりの美しさに、私たちは声を失い、無意識に道を譲り、ぼんやり見上げるしかありませんでした。
その人は馬上から静かな会釈を残し、何事もなかったかのように通りすぎてゆきました。
再び、馬と女性が霧のなかに消えてゆくまで、私たちは茫然と立ちつくし、見送りました。
もうはや40年も前のことですが、あの美しい一枚の絵のような情景は、今も時折り鮮烈によみがえることがあります。
私を馬にむかわせた原点のような出来事はいくつかありますが、最も凝縮された一瞬ではなかったか、と思ったり致します。
そして今、ゆったりと時の流れるこの優しい空間で、楽しそうに暮らす動物たちとめぐりあいました。
トムさんとメグさんのおかげです。お婆さんになるまで、(すでになりかけですが)よろしくお願い致します。
「私の散歩道2016~犬・猫・ときどき馬」11月
→「私の散歩道~犬・猫・ときどき馬~一覧(2004年~2021年)」もどうぞ。
→「小島けい個展 2009に行きました。」(2009年9月25日)
→「秋日和 ―サンダンス―」(門土社:横浜)メールマガジン「モンド通信」(MonMonde)「私の絵画館」No. 85(2015年11月20日)
最終更新日: 2009年 7月 3日 12:05 PM カテゴリー: 馬
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