私の絵画館1:母親になった猫
二年前の夏の終わり。犬の三太と近くのキャンパスを散歩していた時、グランドの近くに、小さな黒いものがちょこんと座っていました。夕闇のなかよく見ると耳の大きな子猫で、一瞬の後、ピャーと走り去りました。★ 続きは題をクリック ↑
その二ヶ月後。同じ場所に黒いものが座っていました。その時も一瞬見つめあった後、大きくジャンプして消えました。闇に浮かんだシルエットは、ガリガリすぎる子猫でした。
寒さは日々厳しさをましており、その子は1週間ももたないだろうと思われました。わたしたちはその夜から朝晩エサを運び始めました。
これが、後の「アリス」との出会いでした。
しばらくの間、エサはいつもなくなっていましたが、姿は全く見えませんでした。二ヶ月をすぎた頃、ようやく離れた校舎の片隅に小さな姿を見るようになりました。
三ヶ月を過ぎると、物陰で待っていて、姿を見ると飛び出してくるようになりました。なかなか触われませんが、エサを食べ始めた時だけ抱くことができるようになりました。
私たちが遅くなった日には、ずいぶん手前の植え込みまで迎えにきたり、食べ終わった後に、近くを散歩している私たちをみつけると、ついて来ようとし始めました。
簡単に身体に触れることはまだできなくても、「車が危ないからお帰り」と追い返すのが、だんだんつらくなってきました。
そうして、昨年の三月三十一日、私たちは一大決心をして、キャンパスに向かいました。
いつものように食べ始めた時をねらって、相方が抱きあげ、間髪を入れず私が洗濯網をかぶせ、大暴れする子を家に連れて帰りました。
そして、仮に「よんちゃん」と呼んでいたのら猫は、新しい名前、不思議の国からきた「アリス」となりました。
全く気付かなかったのですが、その時アリスのお腹には、すでに赤ちゃんがいました。
四月二十四日、アリスは五匹の子猫のお母さんになりました。
執筆年 2009年
収録・公開 →『母親になった猫』(No. 16:2009年11月29日)
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.