私の絵画館7:合歓ときいちゃん
家で生まれた五匹の子猫のなかで、一番元気で活発だったのが、このきいちゃんです。母親のアリスは私たちと出会うまでろくにエサを食べられなかったようで、その後も小柄なままです。そのため五匹が一斉にお乳を飲むことはできず、必ず一匹がはじき出されました。そのはじき出すのがきいちゃんで、いつもはじき出されてウロウロ、オロオロしていたのが、家に残したジョバンニです。★ 続きは題をクリック ↑
私たちは里親捜しの場所に、美人の二匹といっしょに元気な男の子のきいちゃんを連れて行きました。けれど子猫の数にくらべ、里親さんは数えるほどしかいません。私は子猫たちを連れてきたことを半ば後悔し、茫然とつっ立ってていました。
とその時、「どの子が雄かわからんよねー」と私に話しかけた方がいました。三匹の子猫の入ったケージには<雄1雌2>と札があり、男の子はブルーの、女の子にはピンクのリボンが首にまかれていましたが、怖くてしかたのない三匹は隅に固まっており、確かにリボンの色がわかりません。
私はここでがんばらねば、と思い、黄色い毛の子猫が雄であり、もう離乳食で大丈夫なこと、母親と暮らしているのでトイレのしつけもすでに出来ていることを説明しました。
その方はひと通り話を聞くと、一旦離れて他の子猫たちを見に行きました。やっぱりダメなのかなあとぼんやり立っていると、しばらくしてご主人と二人でもどって来て、
「この子にするわ」
ときいちゃんを指さしました。そのご夫婦は、街から車で三十分西の方にある綾町の方でした。
後に「ねんねんねむの木」と題したこの絵の葉書きをお送りしたところ、犬・鶏たちと一緒に住み、元気に田んぼや畑を走り回っていますというお便りが届きました。同封の写真も実にワイルドなきいちゃんでした。
けれど、夜はいつもお母さんといっしょに寝ているそうで、年配のご夫婦に大切にかわいがられている様子が、とてもよくわかりました。
わんぱくきいちゃんは今、「みぃちゃん」と呼ばれています。
執筆年
2010年
収録・公開
→「合歓ときいちゃん」(No. 23:2010年6月25日)