私の絵画館8:向日葵とジョバンニ

 

私の絵画館8:向日葵とジョバンニ

 

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子猫の名前はジョバンニです。

もう27、8年前になりますが、一度だけ、小さな娘と二人だけで映画を観ました。神戸の三ノ宮でみたのは、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」です。今のジブリ作品にも劣らない美しい映像だったと記憶しています。ただ、何故か主人公の少年たちの顔が“猫”でした。★ 続きは題をクリック ↑

少し大きめの耳をもった黒い子猫を見た時、その少年の顔を思い出しました。カンパネルラとジョバンニ。結局、死んでしまう少年の名前ではなく、病気のお母さんのためにミルクを買いに懸命に走る少年、ジョバンニの名前をもらいました。

五匹の子猫のなかで、いつも他の猫たちにはじき出され、お母さんのお乳があたらなかったかわいそうな子、それがこのジョバンニです。そのため、それぞれがしっかりと歩き始めた頃も、一人おぼつかない足どりでヨタヨタしていました。

けれど、転機はいつか訪れるものです。手作りの離乳食を与えると、いつもおなかをすかせていたジョバンニは、誰よりも早く、そしてたくさん食べ、みるみる大きくなりました。

今では筋肉質のしっかりした体型で、ビロードのような美しい毛なみの黒猫になりました。元気一杯で、いたずらや悪さをするのは、たいていジョバンニと決まっています。それでも、一番気が弱いところ、一番寂しがり屋であるところは、小さい頃と少しもかわっていません。

他の兄弟たちを、よろよろヨタヨタ追いかけていた姿が今でも忘れられず、この子をお母さんのもとに残してよかった、とつくづく思います。


執筆年 2010年  

収録・公開 →「向日葵とジョバンニ」(No. 24:2010年7月25日)

最終更新日: 2018年 12月 29日 12:52 PM   カテゴリー: 私の絵画館
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