小島けいのエセイ~犬・猫・ときどき馬~⑥:「梅見月に」(2021年2月)
続モンド通信 27(2021年2月20日)
小島けいのエセイ~犬・猫・ときどき馬~⑥:「梅見月に」(小島けい)
今年はあやうく、梅の香りを楽しむことなく<梅の季節>がすぎてしまうところでした。
ただ先日、思いがけず、雑木の中でひっそりと咲く一本の梅を見つけました。小さい枝を2本だけいただいて帰り、その枝に咲く数えるほどの梅の花で、奥ゆかしくてほんのりと甘い梅の香りを、一年ぶりに味わうことができました。
①「梅1」
②「梅2」
③「梅3」
④「梅4」
梅と前後して、あちらこちらの野原や庭で涼やかな香りを放つのは水仙です。
⑤「水仙」
水仙には特別の思いがあり、この絵画館の連載を始めて間もない2010年1月に、次のような文章を書きました。→「水仙」(モンド通信No. 18:2010年1月)
花はどれもいとおしいと思いますが、なかでも一つだけ、と言われれば、水仙かも知れません。
三十年前の二月十一日、産前休暇に入ったばかりの私は、朝の新聞記事のなかに「淡路の水仙峡」という文字をみつけました。★ 続きは題をクリック ↑
かなり大きなお腹でしたが、とりあえずはまだ子供のいない身軽さで、何の計画性もなく、昼前にでかけました。
明石海峡を船で渡り、岩屋というところからバスで洲本へ。そこから水仙峡までまたバスで30~40分。
ところが、最後に乗ったバスが、途中で止まってしまいました。詳しくは忘れてしまいましたが、一本道が通れるようになるまで2時間以上も待ったでしょうか。
冬の日暮れは早く、ようやく水仙峡にたどりついた時は、もう夕闇がせまっていました。
けれどそのおかげで、観光客はみなひきあげ、茶店の歌謡曲も終了。最終のバスに乗ってきた数人だけが広い畑にちらばり、海へと続く水仙の花々を満喫することができました。
いつのまにかすっかり暮れてしまった静寂のなか、色で描くならレモン色の涼やかな、それでいてどこか優しい水仙の香りにつつまれ、そうっと畑に身をしずめたままひとときをすごしました。
それ以来、水仙は私にとって特別の花になりました。
子供が産まれた後に引っこしたマンションは、ドアから北風が吹きこむ、というので、急きょ内側にもう一枚ドアを作ってもらいました。
殺風景な木のドアの一面に、私はあの日の水仙峡を描きました。
次の転居でその絵は散逸してしまいましたが、今度はたくさんの方たちにみていただけるよう大きなスケッチブックに描きたい、と思っています。
梅も水仙も大好きな花ですので、動物たちと一緒に、何枚も描いてきました。
⑥「梅と猫(ぴのこ)」
⑦「梅と猫(眠るぴのこ)」
⑧「梅と猫(梅ちゃんとさくらちゃん)」
⑨「梅と犬(ぺぺ)と猫(リリ)」
⑩「梅と馬(シンディ)」
⑫「水仙と犬(バーニー)」
⑬「水仙と猫(ぴのこ)」
⑭「水仙と馬(ベティ)」
⑮『ティアラを掘り出せ』表紙絵→『ティアラを掘り出せ』(門土社総合出版、1994/3/1)
梅と水仙の後を追うように、かわいいマリのような花をたくさん咲かせるのが沈丁花です。
⑬「沈丁花」
この花の甘いしっとりとした香りが漂い始めると、春はもう、すぐそこです。
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