本紹介16『桜殺人事件』
本紹介16遠藤康著『遠藤康戯曲集 さくら殺人事件』(1994/8/4)の表紙、裏表紙、帯、挿画のイラストに桜を描いています。
(表紙です。)
(裏表紙です。)
(背表紙です。)
(帯です。)
(挿画のイラスト1です。)
(挿画のイラスト2です。)
(挿画のイラスト3です。)
(奥付のイラストです。)
花を描く時は、できる限り本物の花を目の前にして描きたい、と思います。色も形も香りも、自然に勝るものはないと思うからです。
そのためモデルとなる花を手に入れるのも、ひと苦労です。花屋さんで買うことのできる場合はまだ楽ですが、桜となるとそうはいきません。
桜はたいてい街路樹として植えられていたり、公園のなかにあります。大きな声ではいえませんが、絵を描くためとはいえ、公共のものを幾枝かいただくわけですので、非常に気を遣います。
避けられればよいのですが、この本は題名が「桜殺人事件」です。桜以外の花は考えられません。
雨の夜を選び、いよいよ決行という時、あさはかな私は、目立たないためには黒しかない、と思いました。黒の上着、黒のズボン、黒の長靴、黒の帽子。手には大きな黒の旅行バッグと黒の傘。
いざ出発、とでかけましたが、目的地の公園までには、車の通る道路を歩かねばなりません。でも、花泥棒をするわけですから、ライトに照らされて顔を見られてはいけません。
対向車のライトが近付くと、黒装束で、散歩には不似合いな大きな旅行バッグをさげた二人は、パッと傘を下にさげ、顔を隠して通りすぎます。
その夜、そんな苦労をして、ほんの幾枝かをいただきました。
後日、お友だちのご夫婦に、その雨の夜の出来事を話したら、そんな不自然な格好をしたらそれだけで目立ちすぎでしょう、と大笑いされてしまいました。
なるほどなあ、と納得してからは、さりげない格好をして、さりげない大きめの復路をもって、桜の木に近付くようになりました。
→「桜」もどうぞ。
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