私の絵画館16:櫻舞う
七年前、電話帳で調べると、乗馬のできる牧場は近隣では三つしかありません。
そのなかで自転車で通える範囲は、というと今通っているこの牧場しかありませんでした。
ただそれだけの理由で選んだのですが、それはとても幸運な出逢いでした。★ 続きは題をクリック ↑
「えっ?こんなところに牧場が・・・・・」
と思うような道路わきの急斜面をおりていくと、元みかん畑を切り開いて作られた小さな牧場がみえてきます。
最近になってようやく素敵なログハウスもできましたが、以前はオーナーのお二人はぼろぼろのトレーラーに住み、馬たちも”これで大丈夫?”と思うような小屋に住んでいました。
確かにその小屋は決して大丈夫ではなく、ひどい台風が来た時には馬小屋に水が流れ込み、馬たちは一晩中すねまで水につかってすごしました。
ですから、一番最初に建てられたのは、馬たちの厩舎でした。雨もりのするトレーラーはその後何年もそのままでしたが・・・・。
りっぱな厩舎ができるまでは、正直なところ見た目はみすぼらしかったのですが、それでもここにいる馬たち、ロバ、犬、ときどき草を食べにやってくる黒山羊まで、みんなが楽しそうに暮らしていました。
何故なら、そこでは調教のために怒られたり、たたかれたりすることが、決してないからです、アメリカで修得されたオーナーのやり方は、ほめて、ほめて、ほめて。
その繰り返しで、馬たちは恐怖心なしに様々な能力を身につけてゆきます。
その調教の仕方があまりに見事なので、あちこちで認められ、現在では指導のために全国各地をかけまわっておられます。
牧場ならどこでも馬は大切にされているはず、と私はかってに思いこんでいましたが、現実はそうではありませんでした。
あばら骨が浮きでるくらいまでやせこけ、人間不信に陥った馬が、何頭もこの牧場にやってきました。
そんな馬たちは、人参をあげようと近付くと、後ずさりをして、みがまえます。
人間の手が怖いのだと思います。
それでも、馬は賢い動物です。1~2ヶ月もここですごすと、前からいる馬たちと同じように、人参をあげる手に鼻を近付けてくるようになります。
そしてその頃には皮膚の色つやもよくなり、少しずつ筋肉もついてくるのです。
ロバは高原の牧場に移りのんびり草をはんでおり、この牧場には新たに二匹の子猫たちが加わったりと、あれこれ移動はありましたが、あいかわらずここでは馬・犬、猫たちが、しあわせに暮らしています。
その空間にいると、人もなぜか心が穏やかになるという不思議な場所です。
「桜舞う」と名づけたこの絵のなかで、桜の下でたたずむのは、スカイとマックス。
いずれもこの小さな牧場で生まれた兄弟です。
今年もこんな風に桜の咲く季節が近付きました。
桜舞う頃には、少しでもいいことが増えますように、と祈らずにはいられません。
2011年
→「櫻舞う」(No. 32:2011年3月27日)