アリス

 アリス(水彩)

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 アリス(パステル)

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 二年前の夏の終わり、犬の三太といつものように近くのキャンパスを散歩していました。そしていつものようにグランドの階段で少し休んだ後、再び歩き始めました。と、二mほど先に小さな黒いものがちょこんと座っていました。よく見ると不自然に耳の大きな子猫でした。互いに一瞬見つめあった後、その子はピャーと走り去りました。
 その約二ヶ月後、また同じ場所で黒いものが座っていました。そして前回と同じように一瞬見つめあった後、その影は前よりも大きくジャンプして、道路のむこうに消えました。外燈に一瞬浮かんだシルエットは、これ以上やせることは難しいだろうと思うほどガリガリの、子猫の姿でした。
 寒さは日に日に厳しくなっていました。このままでは1週間もせずに死んでしまうだろう、と思われました。その夜からキャンパスの目立たない場所に朝晩エサを運び始めました。
 これが母親となった”アリス”との出会いでした。
 
 朝晩エサはなくなっていましたが、まわりに姿はなく誰が食べているのか、しばらくは全くわかりませんでした。けれど、2カ月をすぎた頃、離れた校舎の片隅に小さな姿を見かけるようになりました。そして、その距離は、ほんの少しずつ縮まってゆきました。
 3ヶ月を過ぎるようになると、物陰で待っていて、姿をみると飛び出してくるようになりました。相変わらずなかなか触わることはできませんでしたが、エサを食べ始めた時だけ、抱きあげることができるようになりました。
 エサをもっていくのが遅くなったある夜、いつもの場所からずいぶん離れた植え木の陰から、私たちの話し声を聞いて、小さな影が飛び出してきました。待ちきれずに迎えにきたのでしょう。おそらく、キャンパスにいる他の猫たちにエサを食べられてしまい、おなかがとてもすいていたのだと思います。
 またある時は、食べおわって、近くを散歩していた私たちの姿をみつけ、後をついてこようとし始めました。
 近くには来ても、なかなか触わることのできない状態は続いていましたが、ついて来ようとするのを”車が危ないからおかえり”と追い返すのが、だんだんつらくなってきました。
 そうして、昨年の3月31日、私たちは一大決心をして、キャンパスに向かいました。
 いつものように、食べ始めた時をねらって、相方が抱きあげ、間髪を入れず私が洗濯網をかぶせました。何がおこったかわからず大あばれする子猫をキャリーバッグに入れ、大急ぎで家に連れて帰りました。
 そして、仮に”よんちゃん”と呼んでいたのら猫は、新しい名前、不思議の国からきた<アリス>となりました。
 私たちは全く気付いていませんでしたが、その時、アリスのおなかには、すでに赤ちゃんがいました。
 そして、四月二十四日、アリスは五匹の子猫のお母さんになりました。

最終更新日: 2009年 9月 26日 6:33 PM   カテゴリー: , 絵画,
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