私の絵画館43「浜辺(三太と海)」

画像

 

兵庫県にあるJR朝霧駅は、残念なことに花火大会の事故で有名になってしまいましたが、私が通勤していた頃は、まだ直接海辺に続く階段はありませんでした。★ 続きは題をクリック ↑

須磨の奥の方にある高校から帰ってくると、いっせいに階段へ向かう乗客の流れに逆らい、私はホームがすくのを待ちました。そして、駅員さんが端から端まで見渡し

「よし!」

というように、正面の海を左から右へ見た後

「今日も海は広い!」

と一言つぶやきます。

海の広さを確認することで、その日一日心にたまったもやもやをとりあえず沈め、それからようやく、ひと気のなくなった階段を登りました。

あの頃私が見ていた海は、瀬戸内海の明石海峡で、目の前にはひらたく淡路島が横たわっていました。

毎日私の気持ちをささえてくれたその海が、実はさほど広くはなかったと気付いたのは、宮崎に来てからでした。家からほぼ東に自転車で20分のところに、一ツ葉の海がありました。美しい砂浜でしたが、寄せる波はいつも波しぶきをあげ、すぐ深くなる浜辺を、思いもよらない強さで引いていきました。

引越して初めての夏、まだ5才だった下の子は波うち際にこちらをむいてたっていて、アッという間にそのまま2~3メートル後に引きずられてしまい、まっ青になってつれもどしたことがありました。毎年何人かの人が命を落とすという太平洋の海は、おだやかそうな時でさえやはり激しいものでした。

絵のなかで犬の三太が戯れているのが、その一ツ葉海岸です。いつのまにかたくさんの松林のかわりにシーガイアと呼ばれる大きな建物がたち、私たちも家を移り、気持ちのうえでもそして距離も遠くなってしまいましたが、見渡す限り島影もなく船もめったに通らない何もなかった頃のあの海は、今も大切な感動として心に残っています。

 

執筆年

2013年

収録・公開

「浜辺(三太と海)」(No. 59:2013年6月25日)

最終更新日: 2019年 1月 4日 11:06 AM   カテゴリー: 三太, , 私の絵画館, 絵画
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.

Post a Comment