私の絵画館49:ぺぺとリリと梅
今年も梅の咲く季節になりました。
家から青島に向かう途中に「好隣梅」とい看板があります。気にはなりながらなかなか行けませんでしたが、昨年二月思い立って出かけました。★ 続きは題をクリック ↑
看板に従い右に曲がると、二、三軒先の家の前でお婆さんが二人立ち話をしていました。そして私たちに
“好隣梅に行きなさると?”
と尋ねました。
“はい!この道を行くんですよね”
と確かめると、二人は顔を見合わせ、
“この道やけど。遠いがねえ”
と気の毒そうに言いました。
田舎では、すぐそこという感じの看板があっても、実は何十キロも奥にあるということが珍しくありません。私たちはお婆さんたちの言葉を軽く聞きながし、山の方へ自転車を走らせました。
ここからいよいよ山道という所に大きな地図がありました。これを見て、あれ?と思いました。これは梅林の地図というよりはれっきとしたハイキングコースの説明図でした。細長く南の方へ続く山々のところどころに梅が描いてあり、かなり奥の方で梅の絵がたくさんありました。
道は車が通れるアスファルトですが、小さな川の流れに沿って上へ上へと登り続けていました。お婆さんたちの言葉を思い出しそろそろあきらめて帰ろうかと思い始める頃、ようやく道の片側に5、6本の梅。さらにしばらく登って2、3本、というように梅が点在しています。
そしてかなり登った所が峠のようで、この道を進むと青島に至る、と下りにかわっていました。
峠の横には小さな駐車場があり、そこから”ここを登るのか?”と
疑うほどの急な坂が続いていました。
一度目は花には少し時期が早かったこともあり、そこから一気に下りて帰ってきました。
二週間後に行った時は、その急坂を這々の体(ホウホウのテイ)で登りました。確かに坂を登ると山の斜面のあちこちに梅の木はたくさんありましたが、はるか向こうにみわたせる青島の海の景色に色どりをそえるためという感じの印象でした。
実は以前住んでいた家の近くに“市民の森”というかなり大きな公園があり、そこには見事な菖蒲園と梅林がありました。
もちろん梅の季節になると私は毎日スケッチに通い、ほのかにただよう梅の香りと静寂の中、生き物は私と小鳥だけという至福の時を過ごしました。私はスキーウェアの上下を着こんでいましたが、しんしんと冷えていくなかいつのまにか化石と化していきました。そのすぐそばに野鳥はやってきて、ひとしきり<化石>のまわりを歩いた後、何事もなかったかのように飛んでいきました。
そんな素敵な梅林のイメージがあったもので、山の風景の一部というこちらの梅林?にはあまりなじめませんでした。ただそれでも道沿いにひっそりと咲き誇るいくつかの梅の木々は美しく、心に残りました。
この絵のモデルは、宮崎市在住の気のいい忠犬ペペと女王様気どりのリリです。ペペは見るからに愛らしく、リリは後から家族になったそうですが、さすがアビシニアンと思わせる威厳を備えています。
二匹の絶妙のとりあわせを、梅の花と描きましたが、後ろの方の梅にほんの少し「好隣梅」の道端に咲いていた梅のイメージを入れてみました。
ちなみに、この絵は2013年の個展の案内ハガキに使いました。ただし、どちらも主役のままでいてほしくて、毎年絵の一部に書いていた文字は裏側(↓)に印刷しました。
執筆年
2014年
収録・公開
→「ぺぺとリリと梅」(No. 66:2014年02月27日)
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