私の絵画館53:バロンと紫陽花
今年の梅雨は、雨が降りすぎでしょう!と思うほどですが、紫陽花の花だけは生き生きと咲いています。
その紫陽花に囲まれて座っているのは、イングリッシュ・コッカー・スパニエルのバロンです。
実はバロンの前に飼い主さんのお宅には、ゴールデン・レトリーバーのアレックスという犬がいました。そのアレックスは亡くなる数ヶ月前から歩けなくなり、点滴を受けるため毎日病院に通っていました。娘さんお二人にとって大型犬を運ぶのはかなり大変でしたので、二代目は中型犬のバロンが選ばれました。★ 続きは題をクリック ↑
バロンには青色が似合うと思う、という飼い主さんのご意見をとり入れ、紫陽花は紫と青にしました。
出来上がった絵の画像をお送りすると、紫陽花の花も喜んで下さいましたが、<毛のウェーブ具合も自然になっていますが、黒とは言えないダークブラウンの色合いもそのままで、鼻先の模様といい表情が生きたままのバロンでびっくりです>とメールが届きました。
昨年の東京での個展に飾らせていただいた後絵をお送りすると、
以前描いた“アレックスとのうぜんかずら”の絵と並べて飾って下さり、<アレックスとバロンが一緒にいる姿は見られないのは残念だと思いましたが、絵にして並べると、まるで二匹が一緒にいるみたいで、ちょっと涙が出そうでした・・・・>とお返事が来ました。
この飼い主さんは若いお嬢さんです。6年前の1月、家にいたラブラドール・レトリーバーの三太が亡くなった数時間後、一人になった私が薄暗いリビングで、まだぬくもりが残っていそうな三太の敷き布団を、大きなハサミで切るという作業をしていると、
彼女が美しい花カゴを抱いて来てくれました。そしてこんなふうに言ってくれました。<三太が生きていたのはたった8年だったかもしれないけれど、それは単なる8年ではなく、家族と一緒にすごしたものすごく楽しい8年間だったはずだから・・・・>と。喪失感にうちのめされていた私は、その言葉を何度も思い出し心のささえとして、少しずつ立ち直ることができたのでした。
彼女とは年齢も暮らした環境も全く違うのですが、何の違和感もなく何時間も大笑いしたりしながらお話できる、私にとってはとても稀で不思議な存在の、大切なお友だちです。
執筆年
2014年
収録・公開
→「アイちゃん・ふくまるさんとライラック」(No. 69:2014年5月21日)