私の絵画館61「ナナちゃんと桜」

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3月に入り、例年のようにまわりの田んぼでは田植えが始まりました。そんな季節を前にした2月の終わり、スーパーの横にあるお店でたくさんの長靴をみつけました。近付いてみると<田植え用長靴―みのる君―>とありました。

名前を付けるという行為には、どんな時もある種の願いや祈りが込められているものだと思いますが、“みのる君”にも作り手の祈りにも似たひそかな思いを感じました。

そしてもしも、私が田植え用長靴を買うことがあるとしたら、やっぱり愛称のついていないただの長靴より“みのる君”を選ぶにちがいないと思いました。★ 続きは題をクリック ↑

ピーターパンに登場する妖精ティンカーベルは、棒をひと振りして魔法の粉をふりかけますが、<名もないもの>からひとつの<名前をもつもの>に変わる時、そんなきらきらした魔法の粉がふりかけられるのかもしれない、とふっと思いました。

絵のモデルは、ボーダーコリーのナナちゃんです。

実は絵を注文して下さった方は、ナナちゃんの飼い主さんにサプライズで絵を送りたいと考えていました。

そのため、亡くなってから久しいナナちゃんの写真をそれとなく見せてもらい、携帯に撮ったその画像をまた写真にして渡して下さいました。もともと何十年も前の簡単なカメラで撮ったスナップ写真が4枚。遠くの全身、車の窓から出た小さな顔、離れたところから走ってくるナナちゃんの姿、そして目の前にきすぎて口のあたりが映っている写真。

4枚の写真を見ただけで、作品にする難しさを感じた私は”急ぎませんので”という言葉に甘えて1年以上寝かせたままにしていましたが。昨年、これ以上はそのままにできないと覚悟を決め、作品にとりかかりました。

今までに描いたなかで2番目くらいに大変でしたが、亡くなったお母様が大好きだったという桜と一緒に描きあげ、その絵のコピーをお送りしたところ。飼い主さんはそのコピーを見た瞬間、ワッ!と泣きだされたそうで。彼女のこの感動は直接会って伝えなければと、ご注文主さんがわざわざ家までいらして、その時の様子を話して下さいました。

写真をお預りしてから長い時間がかかってしまいましたが、ナナちゃんも無事飼い主さんの元にもどり、私もようやく肩の荷をおろすことができました。

ナナちゃんと一緒に描いたあの桜が、今年ももうすぐ咲き始めます。

 

執筆年

2015年

収録・公開

「ナナちゃんと桜」(No. 78:2015年3月23日)

最終更新日: 2019年 1月 5日 9:45 AM   カテゴリー: , 私の絵画館, 絵画,
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