私の絵画館72:おじょう
10年前の2月、私は電話帳をながめていました。当時乗馬クラブは三カ所だけ。そのなかでかろうじて自転車で通うことができるのは一つしかありません。
2月19日の土曜日、私はその牧場に行き、オーナーのトムさんに会いました。お話を聞き、2月21日の月曜日を予約して帰りました。★ 続きは題をクリック ↑
たくさんの選択の連続で人は生きていると思いますが、ずっと後になってあの時の選択は大きかったなあと気付くことが時折あるようで、この時の出会いもその一つだと思います。
<牧場>と名のつく所なら動物が大切にされていてあたり前。そう思っていた私でしたが、そのあたり前の牧場は、とても少ないことを後で知りました。
通っている間に、他でひどい扱いを受けた馬たちが何頭もここにやってきました。そして少しずつ元気をとりもどし、ほがらかになっていくのをまのあたりにしました。
馬も犬も猫も時折山羊も、この空間ではみんながゆったりすごしている。そこにいれば、人も同じように穏やかな気持ちですごすことができます。ありがたい、と思います。
またオーナーのトムさんは、アメリカでほめて育てる指導法を身につけた方で。それがあまりにすばらしいので、いつのまにかホースクリニシャンと呼ばれ、現在は指導のため全国をあちこち飛び回っておられます。
私が乗馬を始めた頃はまだ牧場におられたので直接トムさんに指導を受けた、という話をすると、それは幸運でしたね!と言われるくらいです。
平日しか行かない私は、最近ではめったにお会いできませんが。
それでも何年か前までは時折トムさんがもどっておられるのと重なることがありました。そんな時は、その時一番困っていることについてくり返しくり返し教えてもらいました。
私はそれを<トムさんのワンポイントレッスン>と勝手に呼んでいたのですが、ずっとうまくいかず悩んでいたことが、その短いレッスンでスッと解決するのは、何とも不思議なことでした。
絵の馬は、葦毛のサラブレッド<おじょう>です。
長く牧場にいましたが、しばらく前から那須高原の牧場に移りました。広々とした緑の草原をトムさんと走るおじょうの動画を、
先日スタッフの方に見せていただきました。美しい姿でした。
執筆年
2016年
収録・公開
→「おじょう」(No. 89:2016年3月7日)