私の絵画館69:さやと蔦
東京で3回目となる今年の個展も無事に終わり、今はまた慌ただしくお礼状を書いたり、ご注文の品を送ったりの毎日です。この一連の作業が終わり次第、心新たに新しい絵にむきあうことになります。
これまでの経験から、今回は日数を増やし前半の4日間、お店にいることにしました。★ 続きは題をクリック ↑
お天気やらお客様のその日の加減でいろいろですが、どの日も大切な方たちとお逢いすることができ、無駄な日は1日もなかったなあ、と思っています。
それでもやはり来て下さる方は、土・日に多く重なります。
土曜日、毎年来て下さるお友だちと長い間楽しく馬の話・絵の話をして、その間にいく組か知り合いの方も来られ。その後、すーっとお客様がおられなくなった時がありました。夜6時すぎで外もまっ暗でしたので、もう犬ちゃんのお散歩で立ち寄る人もいないだろうと、早めにお店を出ました。
ところが何分もしないうちに、オーナーさんから電話がありました。昨年絵を描かせていただいた朔太郎くん(ダックスフンド)と飼い主さんが会いに来ておられるとのこと。
慌ててもどるとお店では健康のために少しスリムになった朔太郎くん、昨年ご結婚されたご主人と飼い主さんが待っていて下さいました。朔ちゃんを中心にあれこれにぎやかに話していると突然ドアがバッ!と開いて若い女の方が飛びこんできました。
“お店は7時までですよね!迷ってしまって遅くなりました!”と息せききって来て下さったのは大阪からのお客様でした。
まだ私が大分の高原で個展をしていた時に出合った若いお友達です。仕事を終えた後急いで飛行機でかけつけて下さいました。朔ちゃんご夫婦にも彼女を紹介すると“大阪のどこ?”と飼い主さん。“守口です”“私隣の枚方よ”となり、突然大阪の話で盛り上がりました。
昨年初めて朔ちゃんと飼い主さんにお会いした時、飼い主さんは口数も少なくもの静かでした。けれど今年は絵を通していろいろメールをやりとりした間柄でもあり、おまけに大阪のお友だちまで加わり、すっかり<元気な大阪の女の子>に変わっていました。そんなみんなで、楽しいひと時をすごしました。
日曜日も、千葉からのお友だちと40年前のモンゴル旅行の話をしている時に元医大生だった彼女(今ではりっぱなお医者さんです!)とお父様が来て下さり、さらには娘のお友だちも加わって。絵はそっちのけで当時の信じられないようなエピソードが
次々と語られるのを聞きました。
もと旺文社の編集者である彼女はおそるべきメモ魔で、私などすっかり忘れていることや当時の状況などを正確に記憶しており、
私も一緒に彼女の話に聞き入る始末。モンゴルの首都ウランバートルの街の中でグレーの背広の集団がいて、近付いてみると上手な日本語で会話する北朝鮮の人たちだった。などという話は、当時何も知らずにいた拉致問題と時代的にも結びつき、一瞬背筋がゾッとしました。夕飯の支度があるからと一度は席を立とうとした彼女でしたが、もっと聞きたい!と娘たちにせがまれ、時間ギリギリまで話続けてくれました。ありがとう!
前半を終えた後丸一日遊んで5泊6日の東京から帰ると、家ではいつも通りのほがらかな4匹の猫たちと憔悴しきった相方が待っていました。メモしておいた複雑な4匹の猫ごはんを懸命に実践してくれたことが、その様子を一目見ただけでわかりました。
今年もたくさんの方にささえられて、実現した個展。“感謝”の一言です。皆様、心よりありがとうございました。
この絵は同じ題名・題材で以前描いたことがありますが、すぐに買って下さった方がいて手元にありません。もう一度描きたくて、号数もかえ、さやちゃんも前は色鉛筆だったのを水彩とパステルで描いてみました。
さやちゃんと姉妹猫のMちゃんの里親さんは毎年二匹の写真入りの年賀状を送って下さいますので、今年はこの絵のカードをお届けしようと思っているところです。
執筆年
2015年
収録・公開
→「さやと蔦」(No. 86:2015年11月28日)