私の絵画館64:ゴロちゃんと白百合
今年は、冒険家植村直巳さんがマッキンレー山登頂後に消息をたってから30年になるそうです。
そんなに月日が流れたのか・・・と思ったのは、ニュースを知ったときちょうど小さな文章を書いていて、それに少し触れたことを思い出したからです。
当時私は須磨の奥の方に出来た新設の高校に勤めており、学校新聞に載せる文章を頼まれていました。ちょうどその時植村さんのことを知り、ある意味<無理もないと思いました>と書きました。★ 続きは題をクリック ↑
その何年か前に、私はマッキンレーの山頂を小さなセスナ機から見ていました。八月だというのに山は白い大きなかたまりでした。そしてところどころ縦に美しい透明のブルーの線が走っています。それは深いクレバスに陽が反射しているのだと、パイロットが教えてくれました。
夏でさえ雪と氷のでっかいかたまりなのに、厳冬期、それも単独での登山なのですから、いくら出来うる限りの準備をしてむかったとしても、自然の猛威がその力を越えてしまうことはある。それはやむを得ないことに思えました。
そんな感想をもったあの時から30年。ちっぽけな一人の人間にもあまりにもいろいろなことがあり、今もその渦中にあるのですが。ありすぎるのでふりかえることはいっさいせず、今描いている絵をどのように完成させるかに、思いを集中させることにいたします。
絵のモデルは静岡県在住だった<ゴロちゃん>です飼い主さんがエメラルドグリーンが一番好き、ということで。ご自身に画用紙を選んでいただきました。
選ばれたあざやかな色の紙を見て、これに描くのか?!と一瞬思いましたが、その色が映えるように白い百合と組みあわせてみました。
完成した絵のコピーをお見せすると、飼い主さんはちょうどひどく落ち込んでいた時だったらしいのですが、パァーと明かるい表情になられた、と後で聞きました。
家族の皆さんから大切にされていたゴロちゃんでしたので、ご両親は今もまだ完全には立ち直れておられないようですが。それでも絵を玄関に飾って、毎日ゴロちゃんと逢って下さっているそうです。
執筆年
2015年
収録・公開
→「ゴロちゃんと白百合」(No. 81:2015年6月30日)