つれづれに:「ウィアーザワールド」(2022年7月16日)

2022年7月16日つれづれに

HP→「ノアと三太」にも載せてあります。

つれづれに:「ウィアーザワールド」

 「黒人研究の会」(6月29日)の月例会で時折発表する人はラングストン・ヒューズ(↑)と遣り取りがあるらしく、色々な話をしてくれた。有名になるとアフリカ系アメリカ人の作家はハーレムから出ることが多いが、ヒューズは今もハーレムに住んでいるとか、独身だとかの話である。遣り取りは「黒人史の栄光」(↓)に註をつけて大学のテキストを作る時に直接本人に手紙を出した時から始まったそうである。「本人にまえがきを書いてもらい、ヒューズ自身が本文を朗読したレコード盤(LP)まで送ってくれた」と鼻高々だった。私もLPを借りる恩恵に預かったという訳である。大阪工大のLL準備室で、カセットテープを作ってもらった。歴史的な宝物である。

 本人の朗読以外に、歌や演説なども入っていた。修士論文でライトの作品を読んでいる時に、アフリカ系アメリカ人の歴史を辿る必要性を感じたが、独特の経緯を持つ音楽、いわゆるブラック・ミュージックを知る必要性も同時に感じていた。ただ音楽の遺伝子を賦与されていないと思われる私のような人間にも、LL準備室でダビングしてもらった「ウィアーザワールド」(↓)は、ブラック・ミュージック入門の役目を果たしてくれた。黒人霊歌のように一人で歌うのを録音したのとは違って、別々の場面(カット)を集めて作品を仕上げる映画のように、たくさんのカットを編集して作られた「ウィアーザワールド」は、私でもぞくぞくした場面が何個所かあった。

 ブラック・ミュージックが独特の経緯を持つのは、アフリカ系アメリカ人がアングロサクソン系の人たちにアフリカ大陸から無理やり連れて来られたからである。アフリカの言葉を奪われ、侵略者の英語を強要されても、その歌詞を借用してアフリカのビートやリズムを加えて自分たちの歌にして、歌を通して代々魂を伝えて来たからだ。アフリカ系アメリカ人の子供たちは小さい頃からそんな魂の歌スピリチャルやゴスペルを聴いて育っている。「ウィアーザワールド」を作ったマイケル・ジャクソンもその一人である。やがてジャズやソウルやブルースやラップなどの新しい形の歌を作り出しながら、その魂は連綿と受け継がれて来たが、いっしょに歌ったアリーサ・フランクリンやレイチャールズはソウル音楽の担い手である。映画『奇妙は果実』で主演を演じたダイアナ・ロス(↓、マイケル・ジャクソンと)は父親が五人別々の子供を持つバイタリティ溢れる母親だが、日本武道館の五万円席がほぼ即日完売だったと聞く。

 そんな大物がエチオピアの飢餓キャンペーン(↓)で何人も集まって歌うのだから、迫力がないわけはない。音感に欠ける私にはブラック・ミュージック入門の一曲となった。
次は、「アーカンソー物語」、か。