つれづれに:ロイター発(2024年4月25日)

つれづれに

つれづれに:ロイター発

 エボラ出血熱流行のCNNニュース(↑)を録画した翌日1995年5月16日のデイリー・ヨミウリで読んだ短い記事のタイトルは「ザイールがエボラウィルスで再び世界の脚光を浴びた」だった。この記事も英語の授業でずいぶんと役に立った。短い記事だが、初めて要約の練習にも使った。パラグラフは18、大体は最初の方に言いたいことが書いてある。英文に下線を引き、それを集めて要約の文章を作る作業である。

Mail & Guardianのエボラ特集記事

①エボラウィルスの発生でザイールに再び注目が集った

②治療薬もワクチンもないウィルスで64人の死者が出た

③多く国民は大統領に公然と腹を立てている

④流行病の頻発(ひんぱつ)も資源不足も、鉱物資源に恵まれた国の富の管理ミスと賄賂(わいろ)のせいだと批判されている

⑤公共資源の管理ミスで日和見的な要因が作り出され、流行病が発生している

⑥医療施設は悲惨な状況である

⑦賄賂はザイール社会と政府に深く染み込んでいる

⑧公務員は何ヶ月分も無給で、賄賂は生活の一手段になっている

⑨ウィルスは老朽化した医療機関に広がり、エイズ禍の対応にも追われている

⑩鉱物の豊かな現シャバ州の分離工作以来、政治問題は早くに始まった

⑪ザイールには豊かな農場があり、水にも恵まれている

⑫銅の埋蔵量を誇る国営鉱山会社が経済のエンジンだが、事実上操業を停止している

⑬銅とコバルトの製造量も落ちこんでいる

⑭政府は国営の3つの中心会社を解散させた

⑮世界銀行も国際通貨基金もベルギーも、ザイールをずっと以前に見捨てている

⑯インフレ率が5桁(けた)近くなりつつある

⑰首都キンシャサは兵士の略奪行為から立ち直ろうとしているところだ

⑱冷戦の間モブツ支援続けたアメリカもザイールでの民主主義を求めて圧力をかけている

<要約>

エボラウィルスの発生でザイールが再注目されている。治療薬もワクチンもなく、64人の死者が出た。大統領は公然と批判され、流行病の頻発も資源不足も、鉱物資源の管理ミスと賄賂のせいだと批評家は指摘する。賄賂が社会と政府に染み込み、公務員の生活の手段になっている。ウィルスが広がる医療機関はエイズ禍の対応にも追われている。現シャバ州の分離工作以来、政治問題は早くに始まった。豊かな農場や水や鉱物資源にも恵まれているが、銅の国営会社も操業を停止している。製造量も落ちこみ、政府は主な国営会社を解散させた。世界銀行などからもすでに見捨てられ、インフレ率も5桁に近い。首都キンシャサは兵士の略奪行為から立ち直りかけているが、冷戦中にモブツ支援を継続したアメリカは民主主義を求めて圧力をかけている。

 短い記事だがザイールの惨状をよく知らない人にもわかりやすいようにうまくまとめられている。もちろん、欧米寄りの記事だ。こんな短い記事なのに3ケ所も誤りがある。awayがa wayに、ReutersがReuterになっている。a wayは校正の見落とし、Reuterは通信社を始めた人に因(ちな)んでつけられたので欧米人には間違いとは言えないかもしれないが、英語表記はReutersだから、やっぱり見落としか?3つ目はsince independence from Belgium in 1963である。こちらの方はお粗末である。記者は独立とコンゴ危機(Congo crisis)と勘違いしている。ま、その程度と考えればいいだけなのかもしれない。3ケ所に気づく人はまずいない。

 アフリカに関する欧米寄りの記事は、得てしてこの程度である。日本と同じで、基本的にアフリカに関心がないだけである。

しかし、この短い記事はあまり事情を知らない人には次を知る手掛かりにはなりそうである。独立とコンゴ危機、その結果、アメリカ主導で作り出された新しい搾取体制やモブツの独裁政権の実態などである。次回からは、1976年の1回目の流行→コンゴ危機→独立→レオポルゴ2世(↓)の「コンゴ自由国」の流れで、歴史を遡(さかのぼ)ることになるだろう。