つれづれに:免疫の仕組み(2024年9月3日)

つれづれに

つれづれに:免疫の仕組み

 今回は免疫の仕組みである。エイズは病原体がヒト免疫不全ウイルス(HIV)なので→ウィルス、ウィルスはDNAを持たないので自分では複製できず子孫を増やすために標的にするのが人間の血液の中の白血球のT細胞→血液、次はウィルスや細菌などの外からの異物を排除する働き→免疫機構である。その仕組みをみておきたい。やはり資料は一般向けと医学生用の2種類を用意した。一つは文科省から配られた冊子の中からである。「人の免疫の仕組み」とこちらもわかり易く図示してある。

 外から異物が入ってくると白血球が総動員して排除するというわけである。図示されているのは、先ず外から病原体、この場合はHIVが血液の中に侵入してきた場合に闘う仕組みである。血液中には食細胞といわれるマクロファージがあちこちにいて、異物(病原体)が入って来るとB細胞とCD4陽性T細胞にその情報を伝える。B細胞は抗体を産生し、CD4陽性T細胞はNK(ナチュラルキラー)細胞と細胞障害性T細胞とマクロファージに情報を伝える。B細胞で産生された抗体とNK細胞と細胞障害性T細胞と活性化されたマクロファージが総動員されて異物を排除する。抗体を作って異物に対抗する方は(体)液性免疫、免疫細胞が直接異物を攻撃する方は細胞性免疫と呼ばれる。一般向けなのでわかりやすい。

 医学生向きの血液についての資料は医学用語の『ヒト生物学』(Human Biology)7章リンパシステムと免疫(Lymphatic System and Immunity)、9章免疫システムと防御のメカニズム(The Immune System and Mechanisms of Defense)、16章性感染症(Sexually Transmitted Diseases)である。既に配布済みのガイトンの『生理学』(Guyton’s Phisiology)の33章人体の感染への抵抗(Resistance of the Body to Infection)も使用した。エイズは免疫不全の病気でもあるが、HIVによる性感染症でもある。

 執行部内にいた基礎系の教授2人とほか何人かが協力して、ずぶずぶの関係から生まれた旧来の教授の選考方法を変えて、公正な公募で最終選考に残った3人による公開講演会後に投票するという選考方法を実施した。私は旧来の人事で辛うじて潜り込ませてもらったあと制度の実態を知って万年講師かと思っていたが、思わず教授選に出るように言われて、まさかの教授になった。結果、後期から前任の教授が担当していた医学英語を引き継いだ。制度を変えた基礎系の人たちが中心になって学部長と副学長を巻き込み、新入生に少人数輪読会を実施することになった。私に輪読会実施の説得に各講座を回る役割が回ってきた。7~8人のグループに分けて、各講座から主に助教授か講師を出して、『ヒト生物学』を週一回輪読するという計画だった。医学科はゼミがないので、小人数は学生にも教員にも貴重な機会である。テキストも高校の生物と2年の基礎医学の橋渡しの良書で、画期的な試みだった。ただ、長くは続かなかったが。

各講座を回った感想は、概ね協力的やな、だった。ただ、教授と話をした救急は、教授が文句たらたらで、何なら執行部に掛け合いますかと言ったら、静かになった。これでは、救急に人は集まらんやろ、と思って聞いてみたら、案の定、学生には不評だった。教授選の制度を変えた人たちが、のちに4・5年次に海外で臨床実習に行ける学生交換制度を、3年次に研究室配属を新しく創った。国内以外にも、国外でも選択できるという制度である。その頃には、卒業生の教授たちも加わって、学生のための制度が充実していったように思う。その時期に教授になったので、公正に選んでもらった義理も多少は感じていたのだろう。ドイツ語の人や前任のアメリカ人が嫌でずっと異動を考えていたが、気がついたら定年退職だった。文科系は教授になる年齢が遅い人が多いし、講座に一人、前任者との年齢差もあるので、結局は教授の期間は11年だった。

医大の講義棟(最初は4階で、あとは3階で授業をやった)

ガイトンの『生理学』は、部屋に来る既卒組の一人から教えてもらった。

「下の書店に行ったら、翻訳が1万円以上、英文は半額、それ見て思わず英文を買ってしまいました。買ったからには使わないと勿体ないので、英語でやりました」

本人は入学時以外は、2~5年と首席だった。よく部屋に出入りしてたので、そんなに勉強をしてる風にも見えなかったが、出来がよかったわけである。その学年は東大、早慶組が多く、何人かで空き時間に集まって輪読会を卒業まで続けていた。1年のときは『ヒト生物学』、たまさんもやりません?と誘ってもらったが、余裕がなくて参加できなかったのは心残りである。

次回はHIV増幅のメカニズムである。