ZoomAA2c:積荷目録(2024年1月15日)

つれづれに

ZoomAA2c:積荷目録

 奴隷船(↑)の積荷目録(Cargo Manifests)が、『ルーツ』(1976)を書いたアレックス・ヘイリー(Alex Haley, 1921-92、↓)が7世代前の祖先を探す手懸かりになったことはよく知られている。主人公クンタ・キンテの子孫のヘイリー役の俳優が、図書館で一心に検索している姿をドラマ→「『ルーツ』」で演じている。

奴隷貿易や植民地支配で繫栄したイギリスからの入植者たちが第3世界から搾り取って潤っているお陰で、図書館も充実している。1980年代の初めにニューヨーク市の公共図書館→「ハーレム分館」(↓)のションバーグコレクションを見に行ったときに、マイクロフィッシュから拡大コピーしながら実感した。ミタやミノルタのコピー機を見て「戦勝国は技術まで持って帰るんや」と歴史の隙間(すきま)を覗(のぞ)き見た気がした。図書館に充分な予算を割かない日本や、大学の図書館ですらほとんど本がないジンバブエなら、ヘイリーでも7世代は遡(さかのぼ)れなかっただろう。

 ヘイリーが自分の祖先を調べ始めたのは、『プレイボーイ』でインタビューしたマルコムXにも大きく影響を受けていたからでもある。奴隷貿易で断たれてしまったアフリカとの繋がりを知ることはアメリカの黒人にとっては自分の存在価値を知るうえでどうしても必要だとマルコムは考えていたのである。暗殺される直前に行った→「ハーレム」での講演でも、アフリカとの歴史的な繋がりを説いて自分自身に自信を持てと熱く語っていた。(→「アフリカ系アメリカの歴史 」)自分のルーツを探す旅はマルコムが果たせなかった遺志を継ぐことでもあったのである。

 ヘイリーは叔母の話に興味を持ち、自分の祖先探しをするようになった。西アフリカのガンビアのジュフレ村に辿(たど)り着き、その村のグリオの口から「ある日、森に木を切りに行っていなくなった」と聞いた。グリオはその村の歴史を口承で語り継ぐ役目の人である。船舶記録と積荷目録から、17歳のクンタ・キンテ(↓)を乗せた船の名前と、船が1767年にアナポリスに入港したことを知った。

今でも入港する船舶は積荷目録を書いているようだが、その頃の積荷目録が残っているのは奇跡に近い。20世紀の初めに連邦政府は連邦作家プロジェクト(Federal Writers’ Project)を組んで散逸する資料の保存を図ったそうである。積荷目録が残っているのもそのお陰かも知れない。プロジェクトにはい人若手をかなり重要な立場で登用したと→「黒人研究の会」の例会で聞いたことがある。

ウェブで調べているとき、積荷目録のコレクションを紀伊国屋書店が売っているを見つけた。「教育と研究の未来」(→「Slave Trade in the Atlantic World」)という題がついているが、そういう貴重な歴史資料を売買していいものなのか?なんでも商売にしてしまう。いつの時代も金持ち層の遣りたい放題である。歴史が証明している。