つれづれに:ラント金鉱(2024年7月28日)

つれづれに

つれづれに:ラント金鉱

 ダイヤモンドも金もオランダの領有地で発見された。ダイヤモンドはオレンジ自由州のキンバリーで、金はトランスバール州北東部の盆地で発見された。どちらも今も南アフリカの経済を支えている。盆地周辺のラント金鉱はのちに中心地ヨハネスブルグを作り出し、南アフリカ経済の屋台骨となっている。ナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、モザンビーク、エスワティニ(旧スワジランド)、レソトの隣接する国々や、アンゴラ、マラウィ、ザンビアからの出稼ぎ労働者も集まって来る。アフリカーナーとイギリス人が創り出した一大搾取機構は、広く南部一帯を巻き込んだ一大経済圏をつくりだしたわけである。周辺国から労働者が集まるのは、どこの国でも厳しく課税されて南アフリカよりも生活が苦しいからだ。国内よりも外国の方が稼げるから、家族と離れて少し稼ぎのいい南アフリカまで出稼ぎに出て、侘しい暮らしを選ぶのだろう。

 1992年にすぐ北のジンバブエに3ケ月足らず家族で一軒家を借りて滞在した。そのとき知り合ったショナ人は田舎から出稼ぎに来て、家族と離れて暮らしていた。その人の父親は若い頃に首都に出稼ぎに来ていた。ジンバブエ大学で知り合いになった学生は、卒業する仲間のほとんどが卒業後外国で仕事を探す予定だと言っていた。新聞でも、ジンバブエ大学の卒業生が卒業しても国内では教員にならず外国に行く現状を嘆いていた。その話になったとき「だって仕方ないですよ。4割も税金を取られているんですから。マラウィなどは外国人には無税で条件もいいですから。私も卒業したら外国で働くつもりです。今は南アフリカは混乱して黒人には厳しいですが、落ちついたら南アフリカに行こうと思っています。一番稼げますから。早くブランドニューの車に乗りたいですからね。そう考えるのは間違ってますか?」と哀しそうに学生は言っていた。日本にいては実感できないことである。

 ラント金鉱は世界でも有数の鉱脈らしい。ただ、鉱石中の金の含有率はそう高くないので、地下に掘り進む必要があり、深い所では4000メートルに達するようだ。1987年に朝日放送の「ニュースステイション」がアパルトヘイト政権に取材を許可されて、金鉱山の地下3000メートルまでカメラを入れて、実際に岩盤を機械で掘削するアフリカ人労働者の様子(↓)を伝えていたが、極めて厳しい状況下で労働者は働いているのが伝わってきた。

 坑道をみたくて、1990年辺りだったと思うが、鹿児島県北部の串木野ゴールドパーク(↓)に出かけたことがある。当時採掘していた抗洞の一つが見学出来たとき、ずいぶんと湿気が多いもんなんやなあと実感した。今は坑洞内の蔵や串木野金山に関する展示物を見学できる「焼酎蔵 薩摩金山蔵」として生まれ変って、観光スポットになっているらしい。