つれづれに:銃創(2024年5月12日)

つれづれに

つれづれに:銃創

 日本は銃社会ではないので、銃による傷、銃創をみかけることは少ない。しかし、アフリカでも紛争地帯と言われるところでは武器として銃などが使われるので、当然銃創の手術も必要となる。キサンガニの診療所でも、反政府軍の兵士(↓)が担ぎ込まれて、大手術となった。銃社会アメリカに住むカーターは近くに下町のあるシカゴの救急の専門医なので、もちろん銃創手術の経験もある。しかし、医療器具もまともに揃っていない病院での手術は初めてだった。キサンガニの診療所は紛争地域に近いので、反政府軍がしょっちゅう送電線を切断する。緊急手術のために発電機をまわすが、燃料が長くは持ちそうにない。いつ電気が切れるかも知れない中での手術だった。

 インド人のNGO現地医師が手術の指示を出していた。ここでの経験が豊富だったんだろう。カーターが手術した患者は、左胸に銃弾を受け弾は肺と腹部を貫通して大腿骨(だいたいこつ)を砕いて止まっていた。女性医師は「資源の無駄使いだわ」と言いながら開腹して銃弾を取り出した(↓)あと、銃の型と特徴を解説している。

 「完全装甲のライフル弾よ。狙撃用ね。ドラグノフ銃は800メートルから殺害可能、内臓も破壊」

「死んでも当然か?」と食い下がるカーターに「時間をかけてもいずれは死ぬ。自家発電は4時間で、重症患者が3人もいるの。そっちが終わったら戻ってくる」と言い残してその場を離れていった。

 ワクチン接種に出かけたマテンダの診療所では生き残った政府軍の兵士を治療した。手術は成功して安静が必要だったが、反政府軍に見つかれば殺されるのを知っていた兵士は、軍に戻ると必死に訴える。しかし、結局はその兵士は反政府軍に発見されて、至近距離から銃で撃ち殺されてしまった。カーターも額に銃を突き付けられた(↓)が、最後まで諦めずに兄の手術をしてくれた医師だと弟がリーダーに耳打ちしたので、辛うじて命だけは取り留めた。コバチュは医師は中立だと訴えたが、紛争地域では中立さえも成立しないのである。コバチュと補助員の2人は、手術した患者を放ってはおけないからと、しばらく反政府軍に壊されたクリニックに残って患者の治療に当たることにした。カーターと看護師はキサンガニの診療所に戻ることになったが、カーターにとってもまさに→「『悪夢』」の連続だった。