課題図書

概要

“The Colonization of Africa," Tamada Yoshiyuki, Africa and its Descendants (Mondo Books, 1995), pp. 6-27.

 アフリカは人類の発展のためにたいへん重要な地域であった。人々が鉄を精錬するようになって、大きな文明の飛躍があった。そして大規模な耕作が始まり、更なる飛躍があった。アフリカは様々な面でヨーロッパよりも優れていた。アフリカからもたらされる金は世界貿易の支払い手段として使われていた。しかし、中世以降ヨーロッパ人によってアフリカの優れた文明は破壊された。当初ヨーロッパの国々はアフリカと貿易を望んでいたがうまくいかなかったので武力でもってアフリカの富を略奪した。やがて奴隷貿易が始まりヨーロッパは富を蓄積し、産業革命の基盤となった。そしてアフリカの多くの国々が植民地となり住民は苦しい生活を送った。第二次大戦後アフリカの多くの国々は独立を果たした。しかし、多くの場合で新しい独立政府は旧来の経済体制を引きずっている。そして現在のアフリカは貧困、紛争など数多くの問題を抱えており植民地時代の負の遺産といえる。
(2005年度アフリカ文化論、農学部獣医学科 工藤敬幸)

課題図書

概要

グリ・ワ・ジオンゴ著、北島義信日本語訳『川をはさみて』(門土社、2002年)

 優雅で生命力溢れるホニア川はカメノ村とマクユ村を隔てつつも、二つの村を結びつける唯一のものだった。双方伝統、文化を重んじてきたが、キリスト教の浸透により対立が生まれる。カメノにうまれた高潔な青年ワイヤキは、キリスト教徒でありギクユ人としての生活文化を望むムゾニがギクユの伝統的儀式である割礼により命を落とすが、彼女の死により、二つの文化の融合・統一の課題を思索し始める。ワイヤキは何よりも教育の重要性を説き独立学校建設を通して、その具体化に邁進する。その途中で伝統・慣習を守るためには白人を追い出すべきという考えに至るも改宗者との対立や、その娘との恋、味方のワイヤキの才能への恐れや嫉妬などの苦難により具体的政治闘争に発展させることはできずに終わる。
(2005年度アフリカ文化論、農学部獣医学科 中間由規)

課題図書

概要

大賀敏子著『心にしみるケニア』(岩波新書)

 ケニアに行きたいと幼いころから想い続けてきた著者は国連環境計画ナイロビ本部で働くことになり単身ケニアに赴く。幼いころからの憧れの地・ケニアにすむことになった著者は胸を膨らませていた。しかし欧米人の住む高級住宅街での暮らしをするうちに出てくる「本当のケニア」に対する疑問を紐解くため一般市民が住むナイロビの街へと居を構える。高級住宅街にいては触れ合うことにできない「ケニアの一般大衆」と触れ合い、辺境の農村へと赴き、本当のケニアを体感する著者。時にはその貧富の差に同情しかけ、時にはそのライフスタイルに驚愕の念を覚え、価値観の差に憤慨しながらも人々の暖かさに感動し、また自分の価値観が如何に狭い世界で形作られたのかを実感させられる。そんな著者の異文化に対する葛藤とケニアの人々の人間模様を描いた作品である。
(2005年度アフリカ文化論、農学部獣医学科 牟田佳那子)

課題図書

概要

山本敏晴著『世界で一番いのちの短い国 ~シエラレオネの国境なき医師団~』(白水社)

 この本は、アフリカ大陸の西端でギニアの隣に位置する、面積は北海道ほどで、人口は約450万人のシエラレオネ共和国という小国を舞台とする話である。この国の平均寿命は(執筆当時)25~35歳と世界最短で、国連やWHO(世界保健機構)から常に注目される、世界最悪の医療事情の国である。この本では、戦争で崩壊した病院を再建し、井戸を掘り、トイレを作り、医療物資を輸送し、外来を作り、入院病棟を作り、全力で医療活動していくその過程を、現地で医師団の一員として働いていた著者が、詳細に記述している。一方で、著者が理想としている、「半年して自分が帰った後もその活動が無駄にならないように未来に残るシステムを造る」ことや「現地文化を尊重し理解しながらも、理論的・科学的な国際協力をする」という、非常に高い目標に向かって挑戦していく姿勢、国際貢献を志す人に対する、勇気と実践的な知識などについても書かれており、シエラレオネの現状や基礎事項、今後の課題など、国際協力に少しでも関わろうとする人々の参考となる一冊である。
(2005年度アフリカ文化論、教育文化学部生活文化課程生活環境コース 中村美樹)