概要
大賀敏子著『心にしみるケニア』(岩波新書)
ケニアに行きたいと幼いころから想い続けてきた著者は国連環境計画ナイロビ本部で働くことになり単身ケニアに赴く。幼いころからの憧れの地・ケニアにすむことになった著者は胸を膨らませていた。しかし欧米人の住む高級住宅街での暮らしをするうちに出てくる「本当のケニア」に対する疑問を紐解くため一般市民が住むナイロビの街へと居を構える。高級住宅街にいては触れ合うことにできない「ケニアの一般大衆」と触れ合い、辺境の農村へと赴き、本当のケニアを体感する著者。時にはその貧富の差に同情しかけ、時にはそのライフスタイルに驚愕の念を覚え、価値観の差に憤慨しながらも人々の暖かさに感動し、また自分の価値観が如何に狭い世界で形作られたのかを実感させられる。そんな著者の異文化に対する葛藤とケニアの人々の人間模様を描いた作品である。
(2005年度アフリカ文化論、農学部獣医学科 牟田佳那子)