つれづれに:そっとお行きよ(2022年10月15日)

つれづれに

つれづれに:そっとお行きよ("Steal Away")

 アフリカから無理やり連れて来られて毎日重労働を強いられる奴隷たちが白人の歌の歌詞を借用して、主に西アフリカのリズムやビートを加えて自分たちの思いを後の世代に伝えたが、白人の歌詞も時には白人とは違う意味で使っていた。白人の「深い河」(→「深い河?」)に出て来るヨルダン川(Jordan River)は、その人たちにはアフリカ大陸と北アメリカの間にある大西洋(Atlantic Ocean)だった。後には、奴隷州と自由州の間に流れるオハイオ川(↓)や、アメリカとカナダの境にある5大湖に準えた。

 ヒューズが「黒人史の栄光」(↑、“The Glory of Negro History,” 1964)の中で紹介している「そっとお行きよ」(Steal away)の「イエスさまのもとに」(to Jesus)や「天国に」(home)も、その人たちには自由を保障してくれる「北部に」(to the North)という意味合いを持っていた。

そっとお行きよ

そっとお行きよ、 / そっと忍んでお行き、 / そっとイエスさまのもとに忍んでお行きよ、 / そっとお行きよ、 / そっと天国に忍んでお行き、 / ここに永く留まる必要もありませんから・・・・・ / 神さま、神さまは私をお呼びになります。 / 神さまは雷で私をお呼びになります。 / 雷の音が私の魂の中に響きます。 / 私はここに永く留まる必要もありません。 / そっと忍んでお行きなさい. . . . . .

STEAL AWAY

Steal away, / Steal away,  / Steal away to Jesus. / Steal away, / Steal away home. / I ain’t got long to stay here. . . . . / My Lord, he calls me. / He calls me by the thunder. / The trumpet sounds within-a my soul. / I ain’t got long to stay here. / Steal away . . . . . . /

<註>within-a=within この接尾aは発音上のなまりで特別な意味はないが、元はin, on, forなどの意味があったと考えられる。

 誰も奴隷になりたかったわけではないので、多くの人が逃亡を企てた。テレビ映画「ルーツ」の主人公キンタ・キンテ(↑)も奴隷市で隣の農園にいるのを知ったファンタに会うために逃亡した。ファンタに会う前に奴隷狩りに捕まり、奴隷調教しに鞭打たれてトビートいう英語名を無理やり言わされた。それでも懲りずに逃亡をしてファンタに会いに行った。「凍える下りここに残り暖かくしていたいのよ」と断られ、また奴隷狩りに捕まった。今度は足首を切断されて、危うく死ぬところだった。クンタに限らず、多くの人が逃亡をした。最初は一人で、そのうち集団で暴動を起こした。ナット・ターナーの暴動は有名である。白人ジョンブラウン(↓)は兵器庫を襲い、黒人といっしょに武装蜂起して奴隷社会を震撼させた。

 北部に逃げて、後に布教活動に励んだサジャナー・ツゥルース(↓)も逃亡奴隷の一人で、ヒューズは次のように紹介している。

「名前について言いますと、神さまがサジャナーという名前を下さいました。人々に原罪について語り、私自身であると説くために国中を旅して歩く運命にあったからです。のちに神さまにもう一つ名前が欲しいと言いました。他の人たちには苗字と名前があったからです。それで、人々に真実を伝えなければいけませんでしたので、神さまは私にツゥルースという名前を下さいました。私には5人の子供がいましたが、みんな奴隷として売られてしまいました。その子たちがどこにいるのか私にはわかりませんし、子供たちも私がどこにいるのかを知りません。しかし私が北極星を見、子供たちも北極星を見ます。それで幾分か気分が楽になるのです。今私は真実を探しながら世界を回っています。神の小さな物ごとではなくて神についての偉大な教えについて考えています。私は真実を求める布教者です。」ツゥルースにとっての真実とは自分のためだけではなくすべての人のための自由だった。そして、暗闇の中で、深い森の中で次のように歌うハリエット・タブマンにとって意味するものと同じだった。

 ("'Now about my name, the Lord gave me Sojourner, because I was to travel up and down the land showin’ the people their sins and bein’ a sign unto them. Afterwards I told the Lord I wanted another name, ’cause everybody else had two names. And the Lord gave me Truth, because I was to declare the truth to the people. I’ve had five children, and I’ve seen ’em most all sold off into slavery. Where they be, I don’t know – and my children don’t know where I be. But I look at the stars, and they look at the stars, and somehow I feels better. Now I walks the world lookin’ for truth. I think of the great things of God, not the little things. I’s a sojourner lookin’ for truth!’ Truth to her was freedom not just for herself, but for all. That’s what it meant to Harriet Tubman, too, in the dark, in the deep woods, singing:") <註>showin’=showing, bein’ a sign=being an evidence (or symbol), ’cause=because, I’ve seen ’em most all=I’ve seen them most of all=I have seen almost all of them, Where they be=where they are, I feels better=I feel better, I wals=I walk, I’s=I is (am)

「そっとお行きよ」は有名なスピリチュアル一つで、この歌は1925年頃にナット・ターナー(↓)が作ったと言われている。その後、地下鉄道運動の逃亡の際に合図として使われた。