つれづれに:トランプ2(2026年1月30日)

つれづれに

つれづれに:トランプ2

 現アメリカ大統領のトランプ(↓)の話である。前回の→「トランプ1」の続編と言うよりは、その前の4回(→「ソウル」、→「南北戦争のあと:政治篇」、→「経済篇1」、→「経済篇2」)のアメリカ関連の続編である。

 トランプがなぜ大統領に選ばれたのかが長いあいだ釈然としなかった。どう考えてみても、あの人格で大統領はないだろうという思いが先に立ったからかも知れない。ところが、最近なんだかわかるような気がしてきたのである。目にとまった新聞記事がきっかけだが、そうか、選挙とは政治家と政党同士の駆け引きなんだから、どんな人物であれ、過半数を取れば選ばれるんだと改めて思い直した。制度的に日本とは違うので、州ごとの得票数で決まる。ヒラリー・クリントン(↓)のように全体の得票数が過半数を超えていても、負ける場合もある。政党の戦略と、何よりも金持ち層の動きを考えれば、元々理解できていたかも知れない。持たない者が絞り取られ、持つものが好き勝手する、その構図は永遠に変わらない。先ず、そのことを考えるべきだった。

 政治家と党の戦略を見極める目が必要となる。政治家も当選しなければただの人だから、議員になるにはどうすればいいかを最優先し、党はどの層を多く取り込めるかを考える。その流れからすると、取り込む層の経済面も大きな要素になる。

例えば、赤狩りに遭った民主党が巻き返すには、どの層を狙うかが最大の課題だった。南北戦争後に加速していた産業化と第2次大戦の好景気でより加速された産業社会が、どのように変化して具体的に人々の毎日の生活にどう反映されていたのか?

南北戦争が終わったあとしばらくして、産業社会化への動きは激しさを増したので、実際の生活で体感した人も多かっただろう。実際に生活がどう変わったは具体的にはわからないが、産業革命で基本構図が大きく変わったのは確かである。今まで手でやってたものを機械でするのだから。出来る範囲も広がるし、ある意味便利になる。鍬で耕していところを耕運機が耕してくれる。手で洗っていた洗濯物を洗濯機が洗ってくれる。歩いて行っていたところに、自転車や車で早く行ける。薪で沸かしていた風呂も、電気やガスで沸かせる。少し考えただけでも想像は広がる。鉄鋼、造船、トラックやバスや列車など、あらゆる面で基本構図が変わったはずである。経済的に豊かになった人たち、特に都会の住人には恩恵が大きかったと思われる。

ドイツは1886年にガソリン・エンジンの車を実用化し、アメリカは1909年に大量生産を開始、1913年にはベルトコンベア方式を導入して低価格化に成功、自動車の大衆化を実現している。自動車の大衆化で、鉄工業や機械工業に石油産業、タイヤのゴムや窓ガラスなどの技術革新や生産の合理化が進んだ。自動車の普及は道路網の整備や物流や通信など、あらゆる分野に影響を及ぼし、現代社会の人間生活を一変させた。大量生産・大量消費時代に突入して行く。

20世紀の自動車ブームに加えて、18世紀後半のイギリスの運河開削ブームと、1830年代がピークの鉄道ブームも大きかった。アメリカで鉄道建設が始まったのは1827年で、1840年代後半に急速に発展した。カリフォルニアのゴールド=ラッシュで西部開拓が推進され、西に向かって人が押し寄せた。大量に、そして短時間に人と物資を運べる鉄道は脚光をあびた。1869年には大陸横断鉄道が開通し、広大な国土の東西をむすぶ大動脈となった。

赤狩りにあったあと民主党が巻き返すためには、産業化の恩恵を一番に受けている人たち、特に人口も多い都市部に住む層の票と、公民権運動の参加者、南部の黒人の票を取り込む工夫も必要だった。民主党が政権を奪い返せたのは、産業化の恩恵を受けている都会の人たちと、公民権運動で勢いに乗るアフリカ系アメリカ人たちの票を、共和党より多く獲得出来たということである。大統領候補のケネディ(↓)の若さも有利に働いて、南部の黒人票の取り込みに成功した。

 マルコム(↓)が回教団を離れる前に街頭演説で「大量の黒人票のおかげで大統領になったケネディは、黒人に対する警察の暴力を野放しにしている』と批判している。1963年にケネディが暗殺されたあと、副大統領のジョンソンが大統領になり、北部共和党議員の一部の協力を得た超党派で公民権法を成立させている。元々民主党は南部の寡頭勢力、奴隷主の代弁者としてワシントンに送り込まれたのに、その民主党が公民権の成立に尽力して元奴隷を解放する側に回ると誰が思ったか?政治家や党の戦略次第では、党も変質するわけである。

小島けい挿画(玉田吉行著英文『アフリカとその末裔たち』)

 その後も、2大政党の政権交代が続いき、民主党のビル・クリントンと黒人初のオバマに続いて、ヒラリー・クリントンが出馬した時、初の女性大統領誕生になりそうな勢いだった。しかし、共和党のトランプが勝った。得票数ではトランプよりヒラリーの方が多かったのだから、ある意味、民主党の戦略次第では結果も変わっていた可能性もある。では、トランプがどの層を取り込んだのか?続きは「トランプ3」である