つれづれに:本田さん(2022年7月14日)
HP→「ノアと三太」にも載せてあります。
つれづれに:本田さん
本田さんは『アメリカ黒人の歴史』(↑)を書いた本田創造さんのことである。「黒人研究の会」(6月29日)の例会で一度だけお話を伺ったことがある。例会に参加し始めて暫くしてからだったと思うので、1984年前後だった気がする。発表のタイトルは忘れてしまったが、発表のあと参加していた人たちが色々質問していたのが印象的だった。まだ大学の職の話もない時期で、アフリカ系アメリカの歴史もほとんど知らなかったので、質問に参加出来なかったのは心残りである。
当時一橋大学の教授だった。どれくらいの親しさだったかは知らないが、貫名さん(↑、→「がまぐちの貯金が二円くらいになりました」、1986年)に呼ばれて来たようだった。受験勉強もしなかったし、周りに大学に行く者もいない環境だったこともあり、一橋大学と聞いてもずいぶんと遠い存在だったが、妻の兄が3人とも卒業生だと聞いて、少し身近になった。「3商大の応援団の対抗戦があった」と3番目の人が話しているのを聞いて、「3商大?」と疑問に思ったことがある。お兄さんの言ってた三商大は、一橋大、神戸大(↓)、大阪市大で、どこも経済系が強い印象がある。行った高校では神戸の教育は低く見ていたが、経済、経営は評価が高かった。最近、二つ隣の研究室にいた元同僚がスペイン関係で一橋大に教授で行ったので、また身近になった。
学士力発展科目でアフリカ系アメリカ人の歴史と音楽をやっていた時に、課題図書にしていた『アメリカ黒人の歴史』をウェブで検索したら、1991年に新版が出ていて今も新本が手に入るので、息の長い新書版である。ウェブでの本田さんの情報はたくさんある。大阪出身で東京大の経済を卒業、神戸大文学部で助教授だったこともあるようである。ジョン・ホープ・フランクリンの『人種と歴史 : 黒人歴史家のみたアメリカ社会』(↑、John Hope Franklin, From Slavery to Freedom―A History of Negro Americans, 1980)を翻訳しているとは知らなかった。1993年に岩波書店から出ている。監訳とあるから何人かで担当したんだろう。フランクリンの本は、アフリカ系アメリカの歴史なら、Carter G. WoodsonのThe Negro in Our History (1922)、William Z. FosterのThe Negro in An American History (1954)と併せて必須である。貫名さんはフォスターの大冊『黒人の歴史―アメリカ史のなかのニグロ人民』(↓)大月書店、1970年)を翻訳している。どちらも歴史的な財産だろう。本田さんに比べて、私の黒人研究会報の追悼文が出て来るくらいだから、 貫名さんの情報は極めて少ない。京大卒でも共産系だからだろう。学生運動の時に翻訳原稿を火炎瓶で焼かれても、学生を支援し、再度時間をかけて翻訳して出版したのも歴史的な財産だろうと思う。例会では『アメリカ黒人の歴史』の評判は上々だった。同じ頃出版され、NHKでも顔が売れていた東京女子大教授猿谷要さんの『アメリカ黒人解放史』(サイマル出版会、1968年)の評判は散々だったかすかな記憶がある。
新書版で、今もなお新版(↓)が出版され続けているだけあって、南北戦争と公民権運動を軸にしたアフリカ系アメリカ人の歴史はわかりやすかった。「アメリカ人の黒人の歴史を、この程度の小冊子にまとめることは、私の能力をいうことを別にしても、大変困難な仕事である。」と本田さんもあとがきで書いているように、大変な苦労があったと思うが、関心を持ち始めた頃に読むのにぴったりだった。その思いもあって、学生の課題図書に入れて学生にも紹介した。今なら本田さんに直接聞きたいこともあるのにと思うが、後の祭りである。
次は、アフリカシリーズ、か。