つれづれに:かき顛末記③西条柿(2022年12月8日)
つれづれに:かき顛末記③西条柿
小島けい画
ハイビスカス(↑)がこんなに長く咲く花だとは気づかなかった。ずいぶんと寒くなって、気温も常時下が一桁台になり、朝晩は零度近くになって来ているのに、まだ花が咲いている。もちろん真夏の勢いはないが、あちこちで咲いている。今年の夏は暑い時期が長く、お盆前後はことのほか暑かった。日中には畑に出る気が起きないほど暑かった。その時期に赤い花が咲いていた。普段はそれほど気にも留めなかったが、少し目を凝らして見ると、いたるところにハイビスカスが植えられていた。「明石」ではお目にかかれなかった南国の花である。最近は黄色い花(↓)もところどころで見かける。
今年最初に目にしたハイビスカスは少しピンク(↓)がかっていた。お盆を挟んだ暑い時期に咲いてすぐに終わると思い込んでいたが‥‥。「こんなに長く咲いていたんだ」と改めて思った次第である。
体調を崩して当たり前の「日常」が送れなくなった遠因を考えて「のど顛末記」と「かき顛末記」を書いた。その続きで「かき顛末記②過去の『つれづれに』」を書いて、今回は「③西条柿」である。
2022年
結婚してから妻が住んでいた明石に住むようになったが、それまでは明石から西に電車で半時間ほどの所に住んでいた。明石は大学のあった神戸と自宅の中間あたりにあった。母親の借金(→「採用試験」、→「揺れ」、→「余震」)で急遽方向転換し、定収入のためだけに高校の教員(→「新採用一年目」、→「修学旅行」↓)になった。そのころまでそこに住んでいたが、柿の記憶は余りない。あれば食べるが、好んで食べたわけでなかったからかも知れない。見たのは丸い型の甘柿で、渋柿の記憶はない。
娘と3人で転がり込んだ家で妻の父親が丸い渋柿を毎年一つずつひもで結んで干していたのを見て、店先の縦長の大きな渋柿が目に入るようになった。ナイロンの袋に入って売られていた。明石駅の行き帰りに寄っていた「魚の棚」商店街(↓)の生鮮食料品の店先か途中の八百屋だったような気がする。袋に西条柿と書いてあった。
それで今の家に越して来て西条柿の苗を探した。宮崎神宮の春の植木市に出かけて、買って来たのである。当時は神宮の近くの宮崎公立大学(↓、→「市立大学」)に非常勤で行くのに宮崎駅に自転車を置いていたので、駅から自転車で神宮に行った。たぶん千円くらいだった。
「桃栗3年柿8年と言われるけど、ほんまに生るんやろか?」と思ったが、7年目に1個だけ生った。それを妻に描いてもらった。
それが隔年で100個以上実をつけるようになり、今年は500個近かったわけである。
木花の授業で会った中原さんは今頃卒業論文の追い込みで忙しそうである。一年生の前期だけ授業があって、その頃から研究室に時々遊びに来るようになり、科研費の手伝いをしてもらったり、シンポジウムの司会をやってもらったりした。卒業後は広島に帰る予定である。ある時、出来たての干し柿を「初物の干し柿のお裾(すそ)分け、西条柿やそうやで」と言って手渡したら「西条はうちの隣街です」と言っていた。ウェブで調べてみたら、「東広島郷土史研究会専門グループ」のサイトがあった。西条柿は現在の東広島市西条が原産と言われ、その地名が名前となっているようだ。サイトには、東広島市にある「長福寺の縁起に、1238年僧良信が本尊薬師如来の霊夢により、弟子信常を鎌倉の永福寺へ遺して求めた霊種を寺内に植えたのが西条柿の原種とある」とあった。「果実は縦長で側面に四条の溝があります」とも書かれていたが、庭に生っている実には溝がないので、値札に間違いがなければ、かけ合わせて作られた品種の西条柿かも知れない。今年剥(む)いている時に溝のある柿もあった。今まで気づかなかったが‥‥。
長福寺跡(上記サイトより)
大ぶりで糖度も高い。剥(む)いて陽に干すだけで、何とも言えない色艶(つや)と甘みが出るのだから、陽の力は偉大である。干すと言うよりはじっくり時間をかけて陽で焼くという感じである。英語ではsun-driedではなく、sun-bakedを使うようである。韓国や中国では王に干し柿を献上したという話を聞くが、他の国に柿はあるのか?気になって世界の柿の生産量を調べた。
2019年の生産量は中国320万7,516トン(75.12 % )、韓国 31万6,042トン(7.4 %)、日本20万8,200トン(4.88 % )、アゼルバイジャン17万7,130トン(4.15 %)、ブラジル16万8,658トン(3.95 %)、ウズベキスタン9万4,065トン(2.2 %)、台湾3万9,552トン( 0.93 %)、イスラエル2万7,000トン(0.63 %)、 イラン2万5,272トン(0.59 %)、ネパール3,085トン 0.07 %
中国が圧倒的に多かった。英語を母国語にしている国はないようだが、英語では一応persimmonというらしい。山頭火の句を英訳するときに調べたような気がする。ブラジル、イラン、イスラエルはちょっと意外だった。ブラジルは移民も関係しているのか?台湾は日本の占領とも関係があるのか?
2022年、実を採ったあと