つれづれに:古本屋(2022年6月22日)

2022年6月21日つれづれに

HP→「ノアと三太」にも載せてあります。

つれづれに:古本屋

 ニューヨーク(↑)で古本屋を回るとは思ってもみなかった。発端はNative Son (1940) を出した出版社を訪ねたことにある。出版されてから40年ほど後の1981年に版元のハーパーアンドブラザーズ社(Harper & Brothers Publishers)に行って「Native Sonはありませんか?」と尋ねたわけである。1969年出版の立原正秋の『冬の旅』(→「伎藝天」、4月23日、→「栄山寺八角堂」、4月27日、→「山陰」、5月6日)について、2022年の今、版元の新潮社に行って「『冬の旅』はありますか?」と聞くようなものだ。今から思うと、よう訪ねて行ったもんやと感心するが、意外な返事が返って来た。丁寧なもの言いだった。「Native Sonの初版本はありませんが、ひょっとしたら42丁目の古本屋に行けばまだ残っているかも知れませんね。そこにはいつも大量に本を流していますので、是非行ってみて下さい。見つかるといいですね」
教えてもらった古本屋に行ったら初版本はなかったが、何と雑誌の現物を見つけてしまったのである。ライトの中編作品が載った雑誌を図書館でみたいと思ってニューヨークまで来たのだが、最大の目的があっさりと達成されてしまった。1944年の「クロスセクション」(2019年2月20日)で、今手元にある。

 薄っぺらい雑誌を想像していたが、ハードカバーの立派な分厚い本で、559ページもある。A NEW Collection of New American Writingと副題がつけてある。乱雑に積み重ねられていた本の山の中から見つけ出した。1945年版もある。そこにはライトの名前はない。少し小振りだが、それでも362ページもあるハードカバー本である。

 初版本はなかったが『アメリカの息子』(↑)、『ブラック・ボーイ』(↓、Black Boy, 1945)、『ブラック・パワー』(Black Power, 1954)などのライトの作品もあった。「購読」(5月5日)で読んだ『怒りの葡萄』(The Grapes of Wrath, 1939)やゼミで使った『アラバマ物語』(To Kill a Mockingbird, 1960)もあった。(→「がまぐちの貯金が二円くらいになりました」、1986年)嬉しくなって手当たり次第に買ってバッグに詰め込んだ。バックが肩に食い込んだ感触が残っていて、重たいバッグを持つといつもあの重さの感覚が蘇える。結局何箱か古本屋から船便で送ってもらった。カードの時代ではなくドルが少なくなってしまい、南部には行けなかった。フライトを変更して、セントルイス経由で帰るはめになった。

 日本でよく知られるマンハッタンは、ニューヨーク市のエリアの一つで、ニューヨーク州の西の端に位置している。西隣のニュージャージー州との境のハドソン川に浮かぶ半島で、東西に走る通り(Street)は数字で表記され、「数字+丁目」で日本語訳されている。有名なタイムズスクエアやグランドセントラル駅は42nd Street、地図(↓)のMidtownの文字の下の通りである。セントラルパークは59th Streetから110th Streetまでとかなり広い。ニューヨーク公共図書館ハーレム分館は135th Streetにあり、かなり上の方である。名所案内の上の地図には入っていない。

 タイムズスクエアーの近くの目抜き通りに古本屋があったというわけである。その辺りは1985年のI Love New Yorkキャンペーンで、ごちゃごちゃしたポルノショップなどが一層され、落書きの象徴が走っているような地下鉄もきれいになった。
次は、ハーレム分館、か。ホテルの最寄り駅から135th Street駅まで初めて地下鉄に乗った。I Love New Yorkキャンペーン以前の、落書きだらけの車輛だった。