つれづれに

つれづれに:ロイター発

 エボラ出血熱流行のCNNニュース(↑)を録画した翌日1995年5月16日のデイリー・ヨミウリで読んだ短い記事のタイトルは「ザイールがエボラウィルスで再び世界の脚光を浴びた」だった。この記事も英語の授業でずいぶんと役に立った。短い記事だが、初めて要約の練習にも使った。パラグラフは18、大体は最初の方に言いたいことが書いてある。英文に下線を引き、それを集めて要約の文章を作る作業である。

Mail & Guardianのエボラ特集記事

①エボラウィルスの発生でザイールに再び注目が集った

②治療薬もワクチンもないウィルスで64人の死者が出た

③多く国民は大統領に公然と腹を立てている

④流行病の頻発(ひんぱつ)も資源不足も、鉱物資源に恵まれた国の富の管理ミスと賄賂(わいろ)のせいだと批判されている

⑤公共資源の管理ミスで日和見的な要因が作り出され、流行病が発生している

⑥医療施設は悲惨な状況である

⑦賄賂はザイール社会と政府に深く染み込んでいる

⑧公務員は何ヶ月分も無給で、賄賂は生活の一手段になっている

⑨ウィルスは老朽化した医療機関に広がり、エイズ禍の対応にも追われている

⑩鉱物の豊かな現シャバ州の分離工作以来、政治問題は早くに始まった

⑪ザイールには豊かな農場があり、水にも恵まれている

⑫銅の埋蔵量を誇る国営鉱山会社が経済のエンジンだが、事実上操業を停止している

⑬銅とコバルトの製造量も落ちこんでいる

⑭政府は国営の3つの中心会社を解散させた

⑮世界銀行も国際通貨基金もベルギーも、ザイールをずっと以前に見捨てている

⑯インフレ率が5桁(けた)近くなりつつある

⑰首都キンシャサは兵士の略奪行為から立ち直ろうとしているところだ

⑱冷戦の間モブツ支援続けたアメリカもザイールでの民主主義を求めて圧力をかけている

<要約>

エボラウィルスの発生でザイールが再注目されている。治療薬もワクチンもなく、64人の死者が出た。大統領は公然と批判され、流行病の頻発も資源不足も、鉱物資源の管理ミスと賄賂のせいだと批評家は指摘する。賄賂が社会と政府に染み込み、公務員の生活の手段になっている。ウィルスが広がる医療機関はエイズ禍の対応にも追われている。現シャバ州の分離工作以来、政治問題は早くに始まった。豊かな農場や水や鉱物資源にも恵まれているが、銅の国営会社も操業を停止している。製造量も落ちこみ、政府は主な国営会社を解散させた。世界銀行などからもすでに見捨てられ、インフレ率も5桁に近い。首都キンシャサは兵士の略奪行為から立ち直りかけているが、冷戦中にモブツ支援を継続したアメリカは民主主義を求めて圧力をかけている。

 短い記事だがザイールの惨状をよく知らない人にもわかりやすいようにうまくまとめられている。もちろん、欧米寄りの記事だ。こんな短い記事なのに3ケ所も誤りがある。awayがa wayに、ReutersがReuterになっている。a wayは校正の見落とし、Reuterは通信社を始めた人に因(ちな)んでつけられたので欧米人には間違いとは言えないかもしれないが、英語表記はReutersだから、やっぱり見落としか?3つ目はsince independence from Belgium in 1963である。こちらの方はお粗末である。記者は独立とコンゴ危機(Congo crisis)と勘違いしている。ま、その程度と考えればいいだけなのかもしれない。3ケ所に気づく人はまずいない。

 アフリカに関する欧米寄りの記事は、得てしてこの程度である。日本と同じで、基本的にアフリカに関心がないだけである。

しかし、この短い記事はあまり事情を知らない人には次を知る手掛かりにはなりそうである。独立とコンゴ危機、その結果、アメリカ主導で作り出された新しい搾取体制やモブツの独裁政権の実態などである。次回からは、1976年の1回目の流行→コンゴ危機→独立→レオポルゴ2世(↓)の「コンゴ自由国」の流れで、歴史を遡(さかのぼ)ることになるだろう。

つれづれに

つれづれに:ロイター

宮崎医大講義棟、3階右手厚生福利棟に研究室があった

 英字新聞を購読したのは英語に慣れるためで、非常勤では出来なかったことの一つだった。えっ?研究室だけやなく、研究費もあり、その→「研究費」で雑誌や新聞が購読出来るんや、と初めて知った。当時は福岡か鹿児島支店の人が各研究室まで営業に来ていた。それで採算が取れていたということだろう。旅行会社の人も同じように定期的に回って来ていたし、必要な時は英語科の担当事務官の人に言えば、研究室まで来てくれた。統合して、そんな状態が他の学部では当たり前ではないと知ったが、医学部では事務員を雇う予算が配分されていて、その中に居る限り、そういうシステムで動くようになっていた。内科や外科のような大きな講座ではどこからか資金が出て、何人もの事務員が机を並べていた。

 特に購読紙の希望はなかったが、何となくJapan Timesは嫌やなと思って、狭い選択肢の中でDaily Yomiuriを定期購読することにした。あれば、毎日目を通すものである。見る所は限られているが、その当時は、南アフリカの記事を読むことが多かった。ケニアやコンゴについても、日本の新聞よりは記事がたくさん載っていた。折角なので、しみったれた近鉄球団と喧嘩して単身西海岸に渡ってトルネード旋風を巻き起こした野茂英雄や、復帰して大活躍をしていたマイケル・ジョーダン(↓)の記事も読んだ。試合がある時は、→「衛星放送」で録画して繰り返し聞いていたから、文字でも確かめられて重宝した。英語の授業でも映像や記事を使うと、楽しそうに見る人も多く、概(おおむ)ね好評だった。小論文入試に初めて英文を使ったとき、野茂の記事を出したら、臨床や基礎の医者からは、スポーツ紙からねえと反対の声が大きかった。京大出の反骨精神の強い基礎系の教授は、いいねえ、おもしろいかもと言っていた。日本文だと信じて疑わなかった受験生は戸惑ったようである。試験で英文を見てあちゃー、と泣きそうでしたよと、授業の自己紹介で言った学生がいた。

 医学科の女子学生で自分で取るのもお金がかかるので、たまさん貸してもらえませんかと言って英字新聞を持って帰る人もいた。赴任後すぐに、アメリカの大衆誌エボニー(↓)の定期購読を申し込んだ。大した記事は掲載されていないが、ブラックミュージックやスポーツの大きな写真を切り貼りして、授業の素材にするのに役に立った。南アフリカの週刊紙Weekly Mailも定期購読した。マンデラの釈放前後の詳しい情報や、エボラの特集記事や、アフリカ文学の書評などは、他では手に入らない貴重な資料だった。

 新聞を読むようになって、ロイターという文字をよく目にするようになった。それまであまり気にかけたことはないが、調べてみる気になった。それで、読者を持たず新聞社に記事を売っている新聞社だと知った。考えれば自然な話で、世界各地のニュースを毎日届けるにはたくさんの特派員が必要で、そんな資金がない新聞社にとっては自分たちで網羅出来ない地域の記事を買える新聞社はありがたい。日本でも共同通信や時事通信があり、両社とも宮崎にも支局がある。

 ロイターのウェブ検索の概要である。

 ロイター(英語: Reuters)は、AP通信、フランス通信社とならび世界3大通信社の1つで、ロンドンに本社を置く通信社で、中立公正の報道姿勢が特徴である。2007年にカナダに本拠を置く大手情報サービス企業トムソンに買収されてトムソン・ロイターとなったが、金融情報・報道部門では引き続き「ロイター」ブランドが使用されている。名前は設立したユダヤ系ドイツ人ポール・ジュリアス・ロイター (Paul Julius Reuter) に因(ちな)む。

 1995年の春にCNNニュースを録画した翌日のDaily Yomiuriで読んだ記事は、ロイター通信社の短い記事だった。

Weekly Mailのエボラ特集記事

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つれづれに:CNNニュース

 1995年の春に突然エボラ出血熱流行の報道が流れた。コンゴでの流行も初めてではなかったが、テレビでも連日報じられ、ニュースや新聞などでも大々的に扱われた。80年代の後半にベルリンの壁が崩壊し、1990年には27年ぶりにネルソン・マンデラが釈放され、4年後には大統領になった。前年にサンフランシスコで大きな地震があり、年が明けて淡路・阪神大震災もあった。都市直下型の地震の怖さを思い知らされた。寸断された高速から落ちかけの車や傾いたままの高いビルなどの映像は強烈だった。2ケ月後に知人を訪ねて地震跡を回った時も、手付かずのところも多かった。またぞろ、世紀末かという報道も出始めたころである。コンゴから持ち帰った強力なウィルスのサンプルで生物兵器を造り、大統領命令でその兵器が投下されそうになったというアメリカ映画がその前の年に公開されて話題になった。その分余計に、エボラ出血熱が大きく取り上げられた傾向は否めないだろう。

 その頃録画したCNN(Cable News Network)ニュースは、一般教育と医学を繋(つな)ぎたいと考えていた私には、想像以上に使い勝手があった。ただ、授業で扱うには準備も必要だった。コンゴの歴史だけでなく、感染症に関する医学の基礎知識も要る。ニュースでは、先ずキャスターが、ザイールでエボラウィルスによって100名以上の死者が出て、更に36人以上の人が感染している状況を伝えて、現地の特派員に経過報告を求めている。特派員は先に、首都に危機が迫るなか、モブツ大統領が北東部の小さな村を訪問したことを伝え、次に密林の映像を映しながら、感染源が特定できていない状況を解説した。そして欧米から送られた国際医療チームの様子を映したあと、大統領が医療チームの費用は他の国で払うべきだと答えているインタビューを挟(はさ)み、流行を抑えるのが先決だが、真の解決策を見つ出すのは難しいと結んである。

 2分40秒余りの短い映像で、キャスターも特派員も原稿を読んでいるだけなので聞き取るのはそう難しくはないが、コンゴの歴史とエボラウィルスとアフリカと先進国の関係を知らないと、内容の理解は難しい。首都に危機が迫るなか、なぜ大統領が小さな村に行ったのか?なぜ大統領は医療チームの費用は他の国でと答えたのか?首都に危機が迫っているのに、遠くの小さな村を訪問したり、派遣された医療団の費用は他の国が払うべきだと日本の首相が答えるとは誰も思わないだろう。ではどうして大統領がそんな行動を取ったのか?

 日本の人でその大統領の行動に違和感を覚えた人はそう多くないと思う。一つはたいていの人はアフリカに関心がないからである。第3世界から搾り取っている先進国側にいて富を享受している自覚がないから、アフリカかわいそうという意識を持っている人が大半である。たくさんの学生と顔を合わせたが、それが現実である。開発や援助の名の下に、多国籍企業による資本投資と貿易で搾り取る今の社会の仕組みを理解する必要がある。それがわかれば、大統領が先進国と手を組んで私利私欲に明け暮れる実態がその仕組みの当然の帰結だとわかる。援助慣れした大統領がまたエボラ騒動を利用して先進国から金を集めるために、取材班を連れて20年前にエボラ騒動のあったところにでかけ、インタビューで無心を仄(ほの)めかしたのである。もう一つは。インタビューに使われたfinanceという言葉が瞬時に聞き取れた人が多くないという面もある。実際にはbe financed by other countries, not hisと受け身で伝えていた。まさか大統領がそんな行動を取っていたとは、平和ボケした日本にいる人には想像もつかない、それが現実だろう。

 すでに手元にあった資料「アフリカシリーズ」、『アフリカの闘い』、『レオポルド王の亡霊』に、新たに1976年の事態を知る手掛かりとして、リチャード・プレストンの『ホット・ゾーン』と衛星放送で録画した「人類の健康を守れるか?」というドキュメンタリーという貴重な資料を見つけた。

 短いCNNニュースだが、実際に英語の授業で扱ってみると、一般教育と医学を繋ぐ手懸かりの第一歩に相応しい素材だった。そこから更に展開して行けそうな気がした。

つれづれに

ZoomAA5第6回目報告

発売30周年記念DVD版の表紙

 今回のゼミでは、奴隷貿易の映像を視聴しそこから三角貿易から産業革命、現代の先進国反転途上国の仕組みに至るまでの流れを学んだ。
 奴隷貿易、三角貿易、産業革命などそれぞれの事柄がどういうものかは学校で学ぶが、奴隷貿易によって得た資本によって産業革命が実現し資本主義が世界基準の仕組みになるなど流れを学ぶ機会、意識する機会は少ない。
 今回のゼミを通してそのことを意識するきっかけを得ることができたため、より長い歴史から現在の社会問題を紐解くように考えていきたいと思う。
 また、映像の中で古い英語表現がでてきてとても新鮮に感じた。言語の不思議さを改めて感じることができた。(MN)

ZoomAA6回目の報告である。奴隷貿易と奴隷制に焦点を絞った。最初にNHK交響楽団をバックに歌う白鳥英美子のアメージンググレイスとクロマティのゴスペルの世界の冒頭の映像を観て、聴いてもらった。奴隷貿易の実態と、奴隷制がアフリカ、ヨーロッパ、アメリカとそれぞれの社会にどう影響があったのかを「ルーツ」を見たあと討論した。最大の問題は、奴隷貿易の資本蓄積で産業革命が近代の歴史を根本的に変えてしまったことだろう。欧米は農業中心社会から大量消費の産業社会に変貌し、その体制を守る武器の開発も進み核開発の段階まで来てしまった。第2次大戦では日本に原子爆弾が投下され、ソ連と日本では原子力発電所の事故までおきた。大量の働ける人口を失ったアフリカ社会はそれまでの自給自足の社会の変貌を余儀なくされたのは言うまでもない。マヘリア・ジャクソンは紹介できなかったので、次回に是非。(YT)